2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07005
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮崎 晴子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (80525890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 無髄神経 / 髄鞘 / ミエリン / 線条体投射神経 / 軸索 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系には海馬の苔状線維、小脳の平行線維、線条体の投射神経線維など意外にも多くの無髄神経が保存されているが、それらの役割についてはほとんどわかっていない。本研究では中枢無髄神経の役割を解明するための研究基盤を確立すべく、無髄神経特異的に発現する遺伝子の同定、および無髄特異的な蛋白質複合体の同定を行う。またナトリウムチャネルのサブユニットのひとつであるNav1.2が広く中枢の無髄神経に分布していることから、その抗体を用いて免疫染色および免疫電顕を行い新規中枢無髄神経の同定を行う。 まず我々は無髄神経特異的に発現する遺伝子を同定するため、無髄神経のひとつである線条体投射ニューロンの遺伝子発現解析を行い、Myelin basic protein (MBP) のsplice variantのひとつであるGolli-MBPが線条体投射神経で強く発現していることを見出した。qPCRの結果から、MBPのsplice variantのうちGolli-MBPのみが線条体投射ニューロンで発現し、他は全く発現していないことがわかった。Golli-MBPは髄鞘を持たないヤツメウナギの脳でも発現していることから、脊椎動物の進化における髄鞘獲得に関与する可能性が示唆された。 Nav1.2抗体の免疫染色の結果から、脳梁の一部と分界条床核由来線維が無髄線維である可能性が高いことがわかった。電顕像からもこれらの部位に無髄線維が多く存在することが示されており、現在免疫電顕による解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線条体投射ニューロンの遺伝子発現解析から、無髄神経特異的に発現する遺伝子の候補としてGolli-MBPを同定した。またNav1.2の抗体の免疫染色像から、脳梁の一部と分界条床核由来線維が無髄線維の可能性が高いことを示した。 一方で、神経トレーサーのひとつであるWGAのcDNAをアデノ随伴ウイルスベクターに組み込み (WGA-rAAV) これをマウス線条体に導入し、線条体投射神経軸索とシナプス結合している細胞を同定することを計画していたが、当初の予想に反してWGAがシナプスを介して輸送されなかった。そのため目標を修正し、各種マーカー(有髄神経軸索、無髄神経軸索、樹状突起、シナプス、受容体、グリア細胞など)の抗体をを用いて蛍光多重免疫染色を行い、線条体投射神経軸索とダイレクトに結合するものが存在するかを調べることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き無髄神経特異的遺伝子の検索を行う。またNav1.2陽性の神経軸索については免疫電顕を行い無髄神経であることを確認する。Golli-MBPのポリクローナル抗体を作製し、マウス脳における分布を調べる。無髄特異的な蛋白質複合体を検索するため、ナトリウムチャネルbeta4 (beta4)、Nav1.2、Golli-MBPの抗体を用いて免疫沈降を行い、質量分析によって結合蛋白質を明らかにする。
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Causes of Carryover |
WGA-rAAVの作製費用を別の予算から支払うことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成30年度に予定しているGolli-MBPのポリクローナル抗体作製準備をすでに始めているので、そちらの費用に充てたいと考えている。また結合蛋白質の同定についても抗体作製後すぐに始める予定なので、質量分析を行う費用に充てたいと考えている。
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