2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07005
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮崎 晴子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (80525890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下郡 智美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (30391981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 無髄神経 / 髄鞘 / ミエリン / 軸索 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系には海馬の苔状線維、小脳の平行線維、線条体投射神経線維など意外にも多くの無髄神経が保存されているが、それらの役割についてはほとんどわかっていない。本研究では中枢無髄神経の役割を解明するための研究基盤を確立すべく、無髄神経特異的に分布する分子の同定、および無髄神経特異的な蛋白質複合体を同定することを目的としている。今年度は中枢の無髄神経のひとつである線条体投射神経を用いて、無髄線維に存在する蛋白質の網羅的解析を行った。 8-12週齢のマウス脳から線条体投射神経線維を多く含む領域を採取し、超遠心を行って膜画分を分離した後スクロース密度勾配遠心によりミエリン(+)、ミエリン(-)画分に分離した。続いてwestern blotを行い、ミエリン(-)画分ではミエリンの主要蛋白質であるMBP(myelin basic protein)がほとんど除かれていることを確認した。これらの画分に存在する蛋白質をSDS-PAGEで比較したところ、差のあるバンドが多数得られたことから、ミエリン(-)画分には無髄神経特有の蛋白質が含まれている可能性が考えられた。続いてそれぞれの画分についてLC-MS/MS解析を行い、MascotScoreのratioがミエリン(-)/ミエリン(+)>1.5となるような蛋白質を「ミエリン(-)画分に濃縮して存在する蛋白質」としてデータから抽出した。このようにして得られた蛋白質にはミエリンインヒビターとして知られているMAG (myelin associated glycoprotein)のレセプターが含まれていたことから、下流のmTORを介したシグナルカスケードが中枢無髄線維の「非髄鞘化」メカニズムに関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに予定していた実験はおおむね終了し、以下の成果を得た。 1)新規無髄マーカー(無髄線維特異的に分布する分子)の同定は、Nav1.5とGolli-MBPを同定したことで達成された。2)中枢における新規の無髄線維(領域)の同定については、マウス脳におけるNav1.2(無髄線維マーカー)の分布から脳梁と分界条床核由来線維の一部が無髄線維であることを明らかにした。本年度に行う予定であった、3)Nav1.2, Navbeta4, Golli-MBPと無髄線維で結合している蛋白質の同定は、無髄線維の膜蛋白質を多く含む画分を調整する方法を確立するに留まり、それぞれの抗体について免疫沈降を行うまでには至らなかった。しかしながら無髄線維膜蛋白質の質量分析の結果から今後の研究に役立つ知見(ミエリン(-)膜画分からミエリンインヒビターのレセプターを発見)を得ることができた。そのため全体の進捗状況をおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を通して、ミエリンインヒビターを介したシグナルカスケードが無髄線維の「非髄鞘化」で重要な役割を果たしている可能性が考えられた。今後は、まずはこの「非髄鞘化」メカニズムが実際に存在するかどうかを実験的に検証する予定である。無髄神経の初代培養細胞、あるいはコンディショナルノックアウトマウスを用いて非髄鞘化カスケードに関与する遺伝子群が破壊されると何が起こるかを詳しく調べる。また、これらの研究を通して中枢神経系における無髄神経の役割を明らかにしていく。 Golli-MBPは無髄神経に分布する蛋白質のひとつであるが、これまでのところ無髄神経での役割が全くわかっていない。そのため今後はfloxマウスを作製し、無髄神経特異的に遺伝子をノックアウトして組織化学的解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)平成28年度に作製したウイルスベクター(WGA-rAAV)を別の予算で支払うことができたため、その差額が今年度にも影響した。また平成30年度に行う予定であった質量分析が、実験の遅延のためまだ行うことができていない。そのため次年度使用額が生じた。 (使用計画)平成30年度の計画にある、「Nav1.2、Navbeta4、Golli-MBP結合蛋白質の同定」に必要である。質量分析に多くの費用がかかる見込みである。
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