2016 Fiscal Year Research-status Report
Ca2+-依存性K+チャネルによる新しい軸索内活動電位伝搬制御のメカニズム
Project/Area Number |
16K07006
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
御園生 裕明 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (40609509)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 軸索 / 活動電位 / 興奮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々が独自に見出した、細胞内Ca2+とCa2+-依存性K+チャネルによる新しい軸索内活動電位制御について、その詳細なメカニズムの理解、発現メカニズムの解明、そして生理的意義を明らかにすることを目的としている。Ca2+-依存性K+チャネルの活性化にはCa2+が必要であるが、これまでに細胞外Ca2+がその源であることを突き止めている。今年度は、軸索に局在する電位依存性Ca2+チャネルを同定し、軸索内、特にランビエ絞輪付近でのCa2+-依存性K+チャネルと電位依存性Ca2+チャネルの共局在を検討するための手法の開発を国際共同研究により行った。オーストリアISTの重本博士との共同研究を開始し、凍結割断レプリカを免疫染色して、軸索上のCa2+チャネルを高感度かつ定量的に検出し、また電子顕微鏡の高い解像度でその局在を決定できる手法の開発を進めている。これまでのところ、軸索タンパク質を染色し、Ca2+依存性K+チャネルが局在する軸索構造を特定できるところまで進んでいる。 また電気生理学を用いて、軸索に局在するCa2+チャネルの同定も進めており、ニッケルに感受性のあるT型Ca2+チャネルの可能性が高いことを明らかにした。さらに、軸索モデルの構築もはじめている。現時点ではチャネル密度が計測できていないので、細かなパラメータが決定できていないが、形態や基本的な膜特性のモデル構築については進めている。 BKチャネル局在化メカニズムについては、現在小脳プルキンエ細胞でのsplicing variant検出系の最適化と、βサブユニットの検出の感度向上に努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究計画として、 (1)有髄軸索におけるイオンチャネルの密度を計測し、Ca2+依存性K+チャネルによる軸索内活動電位制御シミュレーションを構築する。 (2)BKチャネルをランビエ絞輪付近に局在化するメカニズムの探索する。 (3)軸索BKチャネルを特異的に阻害するマウスの作成と解析を行う。 の3つを提案した。現在のところ、(1)のイオンチャネルの密度計測の方法論の確立とシミュレーションの構築を進めている。密度計測を行うための凍結割断レプリカ免疫染色を有髄軸索に適用した例はほとんどなく、手探りの状態であったが、オーストリアISTとの国際共同研究によって、軸索構造中の膜タンパク質を再現よく検出することが可能となっている。また、これまで難しかった電位依存性Ca2+チャネルの検出もできるようになった。想定していたよりも(1)の国際共同研究に時間がかかったが、目的達成に向けて確実に前進しており、研究計画は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
軸索モデルの構築を行う場合には、軸索から実際に電気生理学記録を行い、モデルの妥当性を検証する必要がある。現在、軸索断端(axon bleb)からの記録を試みており、これを安定して行えるようになれば、これまで殆ど知られていない、軸索の電気的特性を知り、軸索内活動電位の制御メカニズムとその役割を検証できるようになると考えている。また、小脳スライス培養系を取り入れることで、軸索記録をより容易に行えるような系を構築することを考えている。培養系では遺伝子操作も用意になるため、チャネルタンパク質の制御メカニズムの研究や、軸索メカニズムの生理的意義の探求のより深い研究も可能になると予想される。
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