2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16K07015
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水口 留美子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (70450418)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 前障 / 大脳皮質 / アデノ随伴ウイルス / 犬アデノウイルス / 狂犬病ウイルス / cTRIO法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前障は大脳皮質の幅広い領域と相互的に神経結合し、感覚情報の統合や注意などの脳高次機能に関与すると考えられている。本研究では、前障の投射ニューロンでCreを発現するトランスジェニックマウス(Cla-Creマウス)を用いて、さまざまな遺伝学的手法を駆使することにより、これらの脳高次機能を生み出す神経回路基盤を解明することを目的として実験を行った。前障-大脳皮質間の情報伝達様式を神経解剖学的に明らかにするために、cTRIO法と呼ばれる方法を用いて、前障Cre陽性ニューロンの入出力関係を可視化することを試みた。この方法ではまず、犬アデノウイルス(CAV2)を軸索末端から感染させ、特定の脳領域に投射するCre陽性ニューロンのみでFlp組換え酵素を誘導する。その後、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてFlp依存的にTVA受容体を発現させ、EnvAで偽型した狂犬病ウイルス(RV)を感染させることにより、特定の脳領域へ投射するCre陽性ニューロンと、その前シナプスニューロンを特異的に蛍光標識する。我々はまず、前障の主な投射先の一つである前頭前野皮質にCAV2を注入し、ここに投射するCre陽性ニューロンの前シナプスニューロンの同定を試みた。その結果、前障内部のニューロンが多数標識されたものの、大脳皮質やその他の皮質下領域には標識された細胞がほとんど見られなかった。このことから、前障では大脳皮質から入力を受ける細胞と前頭前野皮質へ出力する細胞が別個に存在し、お互いが前障内部の神経回路を通じて情報伝達している可能性が示唆された。しかしながら、今回の実験では前障近傍のCre陰性ニューロンにTVA発現細胞が多数観察され、実験系の特異性に関して問題があることから、信頼性のあるデータを得るためには、今後さらに実験条件の検討を行う必要がある。
|