2018 Fiscal Year Research-status Report
高次嗅覚中枢における神経配線図の解読と機能マッピング
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16K07018
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (70332335)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 神経回路 / 脳 / 行動 / 遺伝子工学 / 学習 / 記憶 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
匂い連合記憶に関わるゼブラフィッシュ高次脳領域の同定を目的として、行動学的に中立な匂いとエサ報酬を組み合わせた連合学習実験を行った。匂いの投与に続いてエサ報酬を与えるトレーニングをしたpairedグループと、匂い投与と給餌のタイミングを完全に分離したunpairedグループとの間で、神経活動マーカーであるc-fos mRNAの発現を比較解析した。その結果、腹内側視床の前方部において、pairedグループのc-fos陽性ニューロンの数がunpairedグループより顕著に大きいことが明らかとなった。ゼブラフィッシュの腹内側視床は、構成するニューロンのタイプや神経接続について未だ報告のない神経核で、哺乳動物における相同な脳領域も明らかになっていない。そこで、匂い連合学習に伴って活性化する腹内側視床ニューロンの分子発現プロフィールを明らかにするために、様々な分子とc-fos mRNAの二重標識解析を行った。その結果、c-fos陽性ニューロンは特定の神経ペプチドを発現し、同時にグルタミン酸を主要な神経伝達物質とする興奮性ニューロンの集団であることが明らかとなった。 腹内側視床ニューロンの神経接続および神経活動履歴を遺伝子工学的に可視化するために、トランスジェニックゼブラフィッシュの作製を行った。ゲノムへの挿入効率が低いBACトランスジェニック法からCRISPR/Cas9を介したノックイン法に切り換え、実験条件の検討を行った。その結果、化学合成したcrRNA/tracrRNA、Cas9タンパク質および環状ノックインベクターの組み合わせによって、ゲノムへの高効率な遺伝子挿入が可能であった。目的のトランスジェニック系統を得るためにスクリーニングを継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
トランスジェニックゼブラフィッシュ系統の樹立に想定以上の時間を要している。当該BACトランスジーンのゲノムへの挿入効率が極めて低いことが判明し、実験手法を変更した。また、飼育系統の一部に寄生虫感染が認められ、系統および飼育装置の清浄化が必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9を介したノックイン法により、高効率な遺伝子挿入が可能となった。トランスジェニック系統を樹立し、神経活動履歴や特異的神経回路素子の可視化を行う。また、遺伝子工学的手法と従来の組織化学的手法を組み合わせることで、高次嗅覚中枢における機能マッピングを推進する。
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Causes of Carryover |
予定していたトランスジェニック系統の樹立に至らなかったため、動物系統維持費、その系統を用いた神経回路の可視化および機能操作のための費用が次年度(期間延長)に繰り越しとなった。 繰越金は、トランスジェニック系統の作製、樹立した系統の維持、神経活動履歴の可視化および機能操作など、神経機能マッピングに関する消耗品費、さらには研究成果発表のための旅費に使用する。
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