2016 Fiscal Year Research-status Report
摂食に伴う不快情動の発動を担う神経基盤とその冗長性の解明
Project/Area Number |
16K07024
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 大介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90456921)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 情動 / 感情 / 不快 / 味覚 / c-fos / 動機 / 味覚反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画においては、申請者がこれまでに同定した、不快反応と高い相関を示す腹側淡蒼球、扁桃体レンズ核下部および前交連後脚介在核におけるc-fos細胞の活動が、不快反応に「必要十分」であるかどうかを明らかにすることを目指した。 平成28年度は、まずc-fos細胞の活動が不快反応の「必要」条件である可能性を検討した。そのために、野生型マウスの上記脳領域に、人工受容体であるhM4Diをコードするアデノ随伴ウイルス (AAV)を注入し、hM4Diが十分に発現する3週間後にClozapine N-oxide (CNO)を腹腔投与し、その50分後にキニーネ水溶液を口腔内に注入して味覚反応を調べた結果、不快反応が有意に減弱することが明らかになった。しかしその後、同様の操作でマウスの摂水行動が抑制されることが明らかになり、さらにその抑制効果はhM4Diの代わりにネガティブコントロールとしてGFPを導入した場合も観察されることが明らかになった。つまり摂水行動の抑制は、CNOにより誘導されている可能性が示唆された。従って今後はCNOの投与量を減弱して再度味覚反応や摂水行動を再評価していく必要がある。また、「必要」条件の検討と平行して、平成29年度に予定していた「十分」条件の検討についても予備実験を開始した。まずc-fos-CreERT2マウスでキニーネ刺激依存的に組換えを誘導するために最適な刺激強度や4-OHTの投与量を検討するために、c-fos-CreERT2マウスを2種類のCre依存的なレポーターマウスと掛け合わせた。2種類のレポーターマウスのうち1種類は、刺激強度を高め、4-OHT量を過去の知見より多めに投与することで組換えが誘導されることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい実験を進めるにあたり、技術的な問題を少しずつ解決し、予定していた実験を実質的に進めることが出来ている。その過程において、hM4Diを活性化するために投与しているCNO自体が、過去に複数の論文で採用されている投与量にも関わらず、摂水行動に影響してしまうことが明らかになったことは少し意外であった。現在投与量を減らした状況での摂水行動を観察しており、その場合ではhM4Diを感染させた場合のみ、摂水行動が抑制される傾向がみえつつある状況である。 また、平行して、来年度に予定していた研究計画の一部についても予備的に研究を開始しており、キニーネ刺激依存的に組換えを誘導するために必要な条件が分かりつつある。一方で、当初予定していたc-fos-CreERT2マウスではうまく組換えを誘導的できない脳領域も明らかになってきたので、c-fosと同じimmediate early geneであるarcの同様のノックインマウスである、Arc-Cre-ERT2マウスを導入し、同様にレポーターマウスとの掛け合わせを進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
不快反応の「必要」条件の検討を進めつつ、「十分」条件についても平行して検討していく。「必要」条件については、予定通り野生型マウスへのhM4Diの導入実験を進めていくが、これまでの実験の結果より、この方法では我々が注目しているc-fos細胞以外の細胞の活動を抑制してしまうことによる副作用が生じてしまう可能性が出てきている。その副作用が問題となった場合は、計画書に記載した別の方法である、c-fos細胞を特異的に死滅させる方法や、c-fos細胞で特異的にhM4Diを発現させる方法を試していく。また、c-fos細胞の活動が不快反応の「必要」条件である可能性を検討する実験においては、Cre依存的にhM3Dqを発現するAAVも導入済みであるため、組換えの誘導に最適な条件が見つかり次第、このAAVを導入して、c-fos細胞を人為的に活性化した場合に不快反応が増強されるかを調べていく予定である。また、味覚反応テストに加えて、摂水行動テストも平行して行うことで、不快情動に付随した動機の減弱といった関連機能も同時に評価していく予定である。
|
Research Products
(1 results)