2018 Fiscal Year Research-status Report
胎生~成体期海馬ニューロン新生を微小環境シグナル動態を中心に解析する
Project/Area Number |
16K07033
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
石 龍徳 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20175417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 太一 東京医科大学, 医学部, 助教 (10398232)
篠原 広志 東京医科大学, 医学部, 助教 (10455793)
權田 裕子 東京医科大学, 医学部, 助教 (60424181)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海馬 / 歯状回 / 顆粒細胞 / CXCL12 / CXCR4 / 移動 / エンドサイトーシス / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回の顆粒細胞層内側には、顆粒細胞前駆細胞 (granule cell progenitors, GCP)があり、顆粒細胞が一生の間新生され続けている。この生後の海馬で起こる例外的なニューロン新生は、海馬の学習・記憶や神経疾患に関係することが報告されている。一生続く海馬のニューロン新生のメカニズムを理解するためには、ニューロン新生機構を胎生期~成体期まで包括的に解析することが必要である。今までの研究から、胎生期の海馬顆粒細胞のニューロン新生には、CXCL12/CXCR4シグナル系が関与していることが示唆されている。そこで、CXCL12を分泌する細胞(微小環境に相当)と、その分子の受容体CXCR4を発現するGPCという視点を導入して、GPCにおけるCXCR4分子の発現動態を解析した。その結果、移動中及び到着部位である歯状回では、脱リン酸化型のCXCR4が、GCP細胞内の核周囲部や突起基部に顆粒状に凝集していることを見出した。一方、細胞膜上にはリン酸型と脱リン酸化型のCXCR4が局在していた。CXCR4アンタゴニストのAMD3100によりCXCL12 /CXCR4シグナルを阻害したところ、CXCR4発現は細胞膜上に限られ、細胞内には見られなかった。またAMD3100処置により、GCPに早熟な分化や移動の遅延が起こり、歯状回の周囲部には、異所性のGCPが観察された。これらの結果は、1) 歯状回周辺部から分泌されるCXCL12が、移動中のGCP細胞膜上のCXCR4に作用すると、CXCR4がリン酸化され、エンドサイトーシスされる、2) その後、CXCR4は、細胞内の中心体、ゴルジ体、リソソーム近傍に細胞内移動し、脱リン酸化されることを示唆している。またCXCR4の機能に関しては、CXCR4がGCPの分化、移動、最終的な到着位置を調節することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、胎生~成体期海馬ニューロン新生を微小環境の視点から包括的に解析する目的で、つぎの3つの実験を行うことを計画した。1)胎生期~生後初期では、GFAP-GFP+神経前駆細胞におけるCXCR4の細胞膜から細胞内への移行を詳細に解析する。また、阻害剤や遺伝子改変マウスを用いてCXCR4分子の機能を解析する。さらにCXCR4のエンドサイトーシスに着目し、CXCR4の作用機序を解析する、 2)培養系の解析では、CXCR4のエンドサイトーシスを、タイムラプス観察を用いて観察する、3)成体期の観察では、CXCR4-GFP遺伝子を胎仔期に導入し、その動態を観察する。また、てんかんマウスモデルにおけるCXCR4分子の動態を同様の方法で解析する。1)についてはおおむね研究が終わり、論文としてまとめ、発表することができた。2)については、PC12細胞を用いて実験を行い、培養液中に、CXCL12分子を添加すると、in vivoと同様に細胞内にCXCR4の凝集体が形成されること、またNGFを作用させ、突起伸長を促すと、同様の凝集体を形成することを明らかにした。しかし、この現象の解析が未だ不十分であり、タイムラプス観察は行っていない。3)の遺伝子導入実験については、予備実験は行ったが、まだ十分にデータが集まっていない。てんかんモデル実験では、神経幹細胞・前駆細胞の極性について、新たな研究課題が見つかり、CXCR4/CXCL12の解析以前に解決する問題が浮上した。てんかんモデル実験において、神経前駆細胞の移動方向(極性)が分子層側になり、異所性の移動が起こることを見出した。神経幹細胞の極性については現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
胎生期の神経前駆細胞の移動におけるCXCR4/CXCL12の作用機序についてのin vivoの実験は終了したが、in vitroの実験はまだ終了していない。しかし、この実験に従事していた修士課程の学生が卒業し、継続が困難な状況になったので、この研究は一時中断し、環境が整ったらまた再開したい。てんかんモデル実験に関しては、神経幹細胞・神経前駆細胞の極性に関する新たな研究課題が見つかったので、実験を継続する。神経前駆細胞の移動方向(極性)に対するてんかん発作の影響は既に解析を終わったが、神経幹細胞の突起の伸長方向(極性)に対する影響の解析は未だ終わっていない。CXCR4/CXCL12の解析の前に、このような神経幹細胞の細胞極性の基本的な問題をまず解析し、その後に、CXCR4/CXCL12との関連について解析する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の研究以外の業務の多忙、および研究遂行に時間が掛かったため、最終的な研究結果を得るのが遅れた。現在、てんかんについての最終的な実験を行いつつ、一部の結果については、論文投稿中である。しかし、今後追加実験の可能性が考えられる。次年度の追加実験のための費用、英文校閲料、論文投稿料が必要になると考えられるため補助事業期間を延長した。
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Research Products
(4 results)