2016 Fiscal Year Research-status Report
神経難病那須ハコラ病の脳分子病態解明に関する基礎的研究
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16K07043
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
佐藤 準一 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30274591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀 嘉浩 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (80415140)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 那須・ハコラ病 / ミクログリア / 白質脳症 / TREM2 / DAP12 / シグナル伝達 / reactive oxygen species / オリゴデンドロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的・方法】那須・ハコラ病(Nasu-Hakola disease; NHD)は多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を主徴とする常染色体劣性遺伝疾患で、DAP12遺伝子またはTREM2遺伝子の機能喪失変異を認める。脳ではTREM2(リガンド受容体)-DAP12(アダプター)複合体はミクログリア(microglia; MG)に限局して発現しているが、ヒト脳のTREM2リガンド(TREM2L)は明らかでない。NHD白質脳症におけるMGの役割は明らかでない。本研究では白質脳症発症機構を明らかにするため、「NHDではMGがTREM2-DAP12系を介するネガティブフィードバック機構の欠失により持続的に活性化されて、炎症が慢性化して白質脳症が誘導される」との仮説を考案した。この仮説を検証するために、研究期間3年間で(1)NHD剖検脳でMGの活性化状態を免疫組織化学的に解析し、(2)TREM2Lを同定し、(3)ヒトMG培養モデル系でTREM2-DAP12シグナル伝達系ネットワークを明らかにし、(4)MG異常活性化の制御薬をスクリーニングし、NHDの脳分子病態の解明と治療薬の開発を目指す。初年度はNHD剖検脳でMGの活性化状態を免疫組織化学的に解析した。【結果】NHD脳のIba1陽性MGは、遊走や突起の伸長を制御しているGi/o共役型プリン作動性受容体P2RY12を高発現していた。NHD脳でreactive oxygen species(ROS)産生に関与するNADPH oxidase catalytic subunits p22phox, gp91phoxの発現を解析した結果、両者はMG限局的に発現し、コントロール脳に比較してgp91phoxの発現上昇を認めた。【結論】NHD白質脳症の発症機序としてMGが産生するROSを介するオリゴデンドロサイトの傷害が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度(平成28年度)は、NHD剖検脳MGにおけるP2RY12, p22phox, gp91phoxの発現解析を行い、それらを論文発表した。しかしMGの活性化状態依存性マーカー(M0: TMEM119; M1: iNOS, CD14, CD40, CD74, CD80, CD86, HLA-DR; M2a: CD33, CD204, CD206, CD209; M2b: CD16, CD32, CD64; M2c: CD163)の免疫組織化学的解析が大幅に遅れてしまった。また予定していたTREM2Lの同定も出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度(平成29年度)はNHD剖検脳におけるmicroglia(MG)活性化状態の解析を完了させる。またプロテインアレイProtoArray Human Protein Microarray(9000 proteins)をTREM2-V5プローブと反応させ、有意な結合反応を呈するTREM2結合タンパク質(TREM2L候補)を数種類同定する。さらに培養ヒトMGモデルinduced microglia-like (iMG) cells(TREM2 positive, DAP12 positive; Ohgidani et al. Sci Rep 2014;4:4957)を準備しTREM2Lで刺激し、遺伝子発現プロフィールをDNAマイクロアレイで経時的に解析し、ネガティブフィードバック系を含むTREM2-DAP12シグナル伝達系ネットワークの全容を明らかにする。最終年度(平成30年度)は、iMGでsiRNAを用いてTREM2をノックダウン(NHDの病態を反映)した時に、発現変動する遺伝子群(TREM2標的遺伝子群)をDNAマイクロアレイで同定する。そのうち顕著に発現上昇した遺伝子を指標に、TREM2ノックダウンiMGで、指標遺伝子の発現レベルを正常化する薬剤(MG異常活性化制御薬)を既存薬(抗炎症薬など)の中からqPCRやウェスタンブロットでスクリーニングする。
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Causes of Carryover |
初年度(平成28年度)は、NHD剖検脳におけるmicroglia(MG)のP2RY12, p22phox, gp91phoxの発現解析を行った。しかし予定にしていた活性化状態依存性マーカー(M0: TMEM119; M1: iNOS, CD14, CD40, CD74, CD80, CD86, HLA-DR; M2a: CD33, CD204, CD206, CD209; M2b: CD16, CD32, CD64; M2c: CD163)の免疫組織化学的解析が大幅に遅れてしまった。またTREM2Lの同定も出来なかった。計画が予定通りに進まなかったため、繰越金を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第2年度(平成 29年度)は初めに繰越金を使用して、前年度に予定していた課題を完成させる。すなわちNHD剖検脳におけるMG活性化状態(M0, M1, M2a,b,c)の解析とプロテインマイクロアレイによるTREM2Lの同定を完了させて、遅れを取り戻す。またNHDの遺伝子変異c.141delG in exon 3 of DAP12(frameshift mutation)に関して、CRISPR/Cas9によるゲノム編集で変異を修復する新しい計画が浮上した。この計画の遂行のためにも繰越金を使用する。
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