2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07051
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
笠原 由紀子 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (80638859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 知弘 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10219529)
田口 明彦 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (10359276)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 再生医療 / 炎症抑制 / 血管再生 / 神経再生 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
創傷後の治癒再生過程と同様に脳血管障害後の治癒再生過程にも炎症期、増殖期および成熟期が存在し、理想的な脳神経機能の回復には、そのそれぞれの過程の最適化が必要だと我々は考えている。本研究は、脳梗塞モデルマウスを用いて、①炎症期:脳梗塞急性期における過剰な炎症抑制、②増殖期:脳梗塞亜急性期における微小血管網の活性化、③成熟期:脳梗塞慢性期における成長栄養因子による再生促進、と各時期に適切と思われる治療法を探索し、それらの最適な組み合わせを明らかにし、臨床試験につながる知見を獲得することを目的とするものである。 薬剤の検討:流通している市販薬の中で、効果が炎症期・増殖期・成熟期のいずれかの時期に適していると思われる薬剤を、単剤あるいは組み合わせて脳梗塞モデルマウスに投与し、投薬初期の炎症系細胞の活性化や微小血管網の活性化、また慢性期の形態学的変化と神経機能回復等について評価したところ、単剤ではわずかに治療効果が認められるものはあったが、組み合わせによる相加/相乗効果を確認することはできなかった。 細胞の検討:我々研究グループはこれまでの研究で、脳梗塞モデルマウスにおいて造血幹細胞を含む細胞群の投与が血管新生・血管活性化・血管内皮保護作用を示すことを明らかにし、脳梗塞患者においても増殖期に相当する脳梗塞発症急性/亜急性期での骨髄単核球細胞移植が一定以上の治療効果をあげたことを報告している。また国外では、脳梗塞急性期(炎症期)患者に対する間葉系幹細胞の投与による過剰な免疫反応の抑制が神経機能回復をもたらすこと、また脳梗塞慢性期(成熟期)患者に対する神経幹細胞様細胞の移植が神経栄養因子の補充を介して神経機能回復をもたらすことなどが、臨床試験の結果としても示されている。これらの知見を基に、現在、間葉系幹細胞と骨髄単核球の組み合わせ治療の相加/相乗効果を検証する実験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、28年度で炎症期・増殖期・成熟期の各時期における候補薬剤/細胞がそれぞれ単独で脳梗塞後の機能回復効果をもつことを確認し、29年度以降それらの候補薬剤/細胞の組み合わせ効果の検証を行うこととしていた。本申請は、28年度の途中から採択されたため、研究の着手が半年以上遅れたが、候補薬剤/細胞の単独効果の検証だけではなく組み合わせ効果の検証も同時に実施したため、現在のところ当初の計画がほぼ達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症期の間葉系幹細胞移植と増殖期の造血系幹細胞移植の組み合わせ投与に加え、増殖期の神経幹細胞移植を加えた相加的/相乗的効果の検証を行うと共に、増殖期のコントロール方法として脳循環改善薬の検討も合わせて行う。また、複合的に用いた時に生じる投与量・投与時期の変動についての検討を行い、どのような条件下で組み合わせることが最適であるかを明らかにする。また、現在実験に用いているマウスは若齢マウスであるが、実際に脳梗塞を発症する患者は高齢であり、高齢者の脳では加齢に伴い上昇する炎症性サイトカイン等により慢性炎症状態にあることから、高齢者に今回開発する治療法が有効であるかを、老齢マウスを用いて検証する。さらにこれらの研究と並行して、特許等知財の申請・獲得を行い、臨床試験実施に向けた準備を進めるとともに、論文発表・学会活動を行う。
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Causes of Carryover |
本申請は、28年度の途中(10月)から採択されたことにより、研究の着手が半年以上遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
半年以上遅れた初年度の研究計画を引き続き実施するために次年度使用額を用いる。
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