2017 Fiscal Year Research-status Report
免疫シグナル伝達鎖DAP12を介した神経損傷後のミクログリア活性化機構の解析
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16K07055
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小西 博之 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90448746)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミクログリア / 神経損傷 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経損傷後のミクログリア活性化には、神経損傷を感知するミクログリアの膜上受容体が重要な役割を担うと考えられる。本研究では、ミクログリア活性化を制御する分子として、ミクログリア特異的に発現する1回膜貫通型タンパクDAP12に着目した。 既知のDAP12共役受容体のうち、前年度に機能解析したTREM2以外にSiglec-Hもミクログリアに発現することをすでに見出していた。そこで、神経損傷後のミクログリア活性化におけるSiglec-Hの機能を、Siglec-Hノックダウンマウスを用い解析した。マウスL4脊髄神経の切断により神経因性疼痛モデルを作成し、von Freyテストにより後肢の疼痛試験を行った結果、Siglec-Hノックダウンマウスでは疼痛が増悪することを見出した。さらに脊髄後角における分子発現を解析した結果、Siglec-Hノックダウンマウスでは野生型マウスに比べ、神経損傷後の炎症性サイトカインの発現上昇が顕著であることが判明した。これらの結果から、Siglec-H/DAP12複合体を介するシグナルはミクログリアの炎症性反応を抑制することが示唆された。 脳内におけるSiglec-Hの発現特異性についても研究を進めた。Siglec-Hは胎生期を含めミクログリアに発現するが、汎用されるミクログリアマーカーIba1やCD11bとは異なり、脳内マクロファージや浸潤性単球には発現しないことを示した。さらに、Iba1やCD11bとは異なり、末梢神経系に存在するマクロファージにも発現しないことから、神経系において非常に特異性の高いミクログリアマーカーであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミクログリアでは既知のDAP12共役受容体のうちTREM2とSiglec-Hが発現する。TREM2とSiglec-Hのミクログリア活性化における機能を神経因性疼痛(アロディニア)モデルを用い示した。DAP12はTREM2と複合体を形成した時にはミクログリアの活性化を促進するのに対して、Siglec-Hと複合体を形成した時にはミクログリアの活性化を抑制することが明らかにし、それらの結果を論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
最近TREM2に関してはリガンドが他グループから報告され、TREM2/DAP12複合体がAkt-mTORシグナル経路を介してミクログリアを活性化することが示された。しかし、Siglec-Hに関しては現在のところリガンドが不明であり、分子メカニズムはほぼ解析されていない。そこで、生化学的手法などを用いリガンド探索を行う。さらに、同定されたリガンドがどのようにミクログリアを沈静化するのか、Siglec-H/DAP12複合体の下流で働く細胞内シグナルを明らかにする。
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Causes of Carryover |
非常に順調に研究を遂行することができ、実験の条件検討や人件費にあまり費用がかからなかったため。次年度はリガンドのスクリーニングやその機能解析に多くの消耗品が必要となるため、その購入に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)