2016 Fiscal Year Research-status Report
精神神経疾患患者で見いだされたSLITRK1変異体の病態生理的意義の解明
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16K07057
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
畑山 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50443007)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ノルアドレナリン作動性神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究はおおむね順調に進んでいる。Slitrk1欠損マウスにおいてノルアドレナリン作動性神経の異常を発見するとともに、ヒトSLITRK1を子宮内電気穿孔法により導入することでも神経発達に異常が生じることを見いだした。しかもこの神経発達の異常は行動異常が顕在化する時期にすでに統計上有意であり、既知の機能であるシナプス形成についての異常が明確になるよりも早期に発現する。既報のノルアドレナリン含量の結果や、薬剤投与による効果なども含めて自発行動を制御する出生後の脳の発達において重要な役割を果たしていると考えられる。現在、ヒト変異体を導入した際の神経発達について野生型と比較する実験をおこなっている。また青斑核を含む領域の初代培養をもちいた系においてもSLITRK1が突起伸展に影響を及ぼす結果を得ている。結合タンパク質の解析からエンドサイトーシスに関与する可能性が考えられたため、とくにクラスリン依存性の小胞の形成について検討をおこない、SLITRK1がクラスリン陽性の小胞形成に関与していることを示す結果を得ている。SLITRKファミリーはその名前の由来から細胞内ドメインがTrk受容体と相同性が高いが、Trkシグナルの受容において活性化するリン酸化ERKについて検討したところ、SLITRK1がこのシグナルの活性化に関与することを示す結果を得ている。一方で、L1ファミリーについても初代培養細胞をもちいた実験によりSLITRK1との結合が突起伸展へ作用することを示唆する結果を得ており、さらなる追究をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初代培養をもちいた実験についてはほぼ計画通り実施しているが、一部トレース実験については当初から困難が予想されていたが、分解や生理活性などの点で実施を断念している。その一方で、子宮内電気穿孔法をもちいた系に関しては変異体の解析に取りかかっており、予定を繰り上げて実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
現状においてSlitrk1の新たな機能であるノルアドレナリン作動性神経の発達に対して生体および試験管内での実験からその作用を示すことができたと考えている。変異体の解析も順調に進んでいることから、可能な限り早期の投稿と論文発表を目指して行きたい。
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Causes of Carryover |
交付決定が10月であり、予算執行期間が短かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、抗体やいくつかの高額な試薬を購入する計画があるためその購入に予算を使用する。
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Research Products
(2 results)