• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2018 Fiscal Year Research-status Report

二種類の同一サブクラスGタンパク質共役型受容体によるシグナル伝達のクロストーク

Research Project

Project/Area Number 16K07063
Research InstitutionSaitama Medical University

Principal Investigator

周防 諭  埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20596845)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords神経伝達物質 / Gタンパク質共役型受容体 / C. elegans / カルシウム / cAMP
Outline of Annual Research Achievements

Gタンパク質共役型受容体は神経伝達物質を含む様々な生体物質の受容体であるが、一つの伝達物質に対し受容体が複数存在することが知られている。線虫C. elegansでは、神経伝達物質のオクトパミンはSIAと呼ばれるニューロンでSER-3とSER-6の二種類のオクトパミン受容体に作用しCREBの活性化を起こすことを明らかにしている。本研究では、この細胞を用いて、類似した受容体が複数存在することの生理的な意義を明らかにすることを目標にしている。これまでに、カルシウムイオン濃度を測定できる蛍光たんぱく質プローブの遺伝子とSIA特異的な遺伝子発現を起こすプロモーターの融合遺伝子を導入した株を用いて、オクトパミン刺激によってSIAニューロンでのカルシウム反応を検出している。さらに、Gq共役型のSER-3、SER-6あるいはGi共役型のOCTR-1受容体、それぞれ単独の変異体ではカルシウム反応が見られたが、全てのオクトパミン受容体の欠損株では反応が見られなかった。SER-3あるいはSER-6単独の変異体でも反応が見られなくなるSIAでのCREBの活性化とは異なり、一つの受容体がなくなってもカルシウム反応が引き起こされることが明らかになった。
さらに、このSIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達が線虫の運動量を制御することを明らかにした。ドーパミン欠損株では、SIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達が亢進し、その結果、運動量が上昇することを見出した。この現象には、SER-3、SER-6およびOCTR-1が関与していることを明らかにした。この結果から、SIAニューロンの反応が運動量の制御に関与していることを示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

蛍光プローブと細胞特異的プロモーターの融合遺伝子を、線虫に導入し、UV照射により導入遺伝子をゲノム内に組み込むことで安定的な遺伝子導入株を作製した。この株について、マイクロ流路デバイスを用いてオクトパミン曝露を行い、再現性よくカルシウム反応が検出される条件を決定した。さらに、Gq共役型のSER-3とSER-6のほかに、Gi共役型のOCTR-1の3種類のオクトパミン受容体について変異体の解析を行った。その結果、いずれの受容体についても、単独の変異体ではオクトパミン依存的なカルシウム反応が見られることを見出した。さらに、全ての受容体の変異体では、カルシウム反応はほとんど見られなかった。この結果から、SER-3あるいはSER-6単独の変異体でも反応が見られなくなるSIAでのCREBの活性化とは異なり、一つの受容体がなくなってもカルシウム反応が引き起こされることが明らかになった。
さらに、オクトパミンによる運動量の制御については、オクトパミン受容体遺伝子の変異体を用いて運動量の解析を行い、カルシウム反応と同様に3種のオクトパミン受容体が運動量の制御に関与していることを明らかにした。また、細胞特異的レスキュー実験により、SIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達が運動量の増加を引き起こすことを明らかになった。この結果により、上記のイメージングで解析しているSIAでのオクトパミンシグナル伝達の下流で、運動量の制御が行われていることが示唆された。
線虫の運動量の制御について重要な発見があったのが、蛍光プローブを用いた解析は当初の計画より遅れているので、総合的にみてやや遅れていると判断した。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究で、オクトパミンに対するSIAニューロンでのカルシウム反応はSER-3、SER-6、OCTR-1受容体の3重変異体では見られないことが明らかにしている。これら変異体の全ての組合せの2重変異体などについてより詳細な解析を行う。また、受容体の下流で働く因子などについても解析を行いオクトパミンによるカルシウムシグナル伝達を明らかにしていく。さらに、cAMPプローブを用いて同様のイメージング解析を行い、SIAニューロンでのcAMP濃度変化についても解析することで、複数の受容体の関わるSIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達のメカニズムを明らかにしていく。
以前の研究で、SIA神経細胞でのCREBの活性化については、SER-3とSER-6が必要でOCTR-1は必要でないことを明らかにしている。しかし、オクトパミンによる運動量の制御についてはOCTR-1も必要であることが示唆されている。そこで、OCTR-1がどのような機序でSIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達に関与しているか明らかにする。発現解析を行ったところ、OCTR-1はSIAニューロンで発現していた。そこで、OCTR-1の細胞特異的レスキュー実験を行いOCTR-1がSIAニューロンで働いているのか、それとも別の細胞で間接的に作用しているのか明らかにする。
また、SIAニューロンでのオクトパミン経路の生理的な役割を明らかにすることは本研究にとって重要であるので、オクトパミンによる運動量の制御に関しても解析を進めていく。オクトパミンによる運動量制御に影響を及ぼす遺伝子を明らかにしていくことで、オクトパミンシグナル伝達に関わる因子を明らかにする。

Causes of Carryover

応募時研究計画ではイメージング用の高性能CCDカメラを購入し、既に研究室に設置してある蛍光顕微鏡に取り付けて使用することを検討していた。しかし、交付決定した予算は申請時予算よりも小さいので、十分な性能を持つものを購入すると他の予算を十分に確保することが難しかった。研究協力者の坪井貴司博士の研究室では、すでにイメージング解析用の顕微鏡システムが設置されており、ここでマイクロ流路デバイスを用いた解析を行うことが可能となった。このため、上記のCCDカメラの購入はしなかった。また、今年度は比較的消耗品費の少ない運動量解析実験を多く行ったので、次年度使用額が生じている。
次年度は、イメージングと運動量解析のために分子生物学実験試薬、線虫飼育用試薬、プラスティック器具などの消耗品費として使用することを計画している。また、本研究の成果を発表するための学会発表用の旅費、さらには論文の投稿料および掲載料として支出することを計画している。

  • Research Products

    (5 results)

All 2018 Other

All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] RGB-Color Intensiometric Indicators to Visualize Spatiotemporal Dynamics of ATP in Single Cells2018

    • Author(s)
      Arai Satoshi、Kriszt Rokus、Harada Kazuki、Looi Liang-Sheng、Matsuda Shogo、Wongso Devina、Suo Satoshi、Ishiura Shoichi、Tseng Yu-Hua、Raghunath Michael、Ito Toshiro、Tsuboi Takashi、Kitaguchi Tetsuya
    • Journal Title

      Angewandte Chemie International Edition

      Volume: 57 Pages: 10873~10878

    • DOI

      doi: 10.1002/anie.201804304

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Presentation] Dopamine increases locomotor activity in C. elegans males2018

    • Author(s)
      Satoshi Suo, Kazuki Harada, Shogo Matsuda, Takashi Tsuboi
    • Organizer
      Asia-Pacific C. elegans Meeting
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] ドーパミンはC. elegansの自発運動の性差を作り出す2018

    • Author(s)
      周防諭
    • Organizer
      線虫研究の未来を創る会
  • [Presentation] ドーパミンはC. elegansオスの自発運動量を制御する2018

    • Author(s)
      周防 諭、原田 一貴、松田 翔吾、王 旻、丸山 敬、淡路 健雄、坪井 貴司
    • Organizer
      分子生物学会年会
  • [Remarks] 所属機関ホームページ

    • URL

      http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/yakuri/suo.html

URL: 

Published: 2019-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi