2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07065
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塗谷 睦生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60453544)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アストロサイト / 形態 / 構造機能連関 / 2光子顕微鏡 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の主要なグリア細胞であるアストロサイトの形態は神経細胞に比肩する複雑さを持ち、その構造は進化と共に複雑さを増すことからも機能的重要性が示唆される。しかしアストロサイトの構造機能連関に関する知見は乏しく、それが故にアストロサイトの機能発現機構の多くが謎に包まれたままとなっており、解明が急務の課題である。本研究では生化学的手法とレーザー走査顕微鏡観察法を併せ、アストロサイトの構造機能連関の解明を試みている。 これまでの研究から、血管を取り巻くアストロサイトの足突起が細胞内コンパートメントとして働き、ここには脳の主要な水チャネルであるAQP4や、アストロサイト細胞間のギャップ結合情報伝達を担うコネキシンCx43をはじめとする重要な機能分子群が局在していることが明らかとなった。しかし、これらの機能分子に関してはその制御機構や様式の解明が進んでいない。そこで、神経細胞の解析で用いられてきた種々の生化学的解析法を応用し薬理学的手法とあわせることで、アストロサイトの機能に重要な役割を果たす分子群の性質と、様々な状況下における変化の解析を試みた。ここから、アストロサイト細胞間のギャップ結合を主に担うCx43分子の機能制御に重要なリン酸化が、臨床で多用されている麻酔薬であるプロポフォールにより直接的に制御されているという知見が得られた。これは、神経細胞に作用することで薬理学的作用を発揮すると考えられているプロポフォール、更には他の薬剤が、神経細胞と共にアストロサイトに直接作用し、アストロサイトの生理機能に重要な役割を果たす分子群を制御することで薬理学的作用を発揮していることを示唆するものとなった。このような研究を更に推進することにより、アストロサイトの細胞生物学的な理解のみならず、脳神経系の薬理学に関して新たな観点からの知見が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り研究を遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の平成30年度には、これまでの生化学的解析を更に推進すると共に、レーザー走査顕微鏡を用いてアストロサイト微細構造と情報伝達との連関の解析の推進を試みる。 これまでの研究から、アストロサイトの微細構造における機能タンパク質の重要性とその制御に関する知見が得られてきた。しかし、これらのタンパク質群がどのようにしてその特異的な細胞内局在を実現しているかについては多くが謎に包まれている。神経細胞では既に一般的に知られるようになったタンパク質の輸送や局所的な翻訳など、微細構造レベルでのタンパク質機能の発現と制御を支える細胞生物学的な知見がアストロサイトではほとんど明らかとなっていない。そこで、近年開発された最新の標識化ツールを駆使することで、アストロサイトにおけるmRNAやタンパク質の局在とその動態、更にはそれらの制御様式についての解析を進める。 これに並行し、レーザー走査顕微鏡を用いたライブイメージング解析により、アストロサイトの構造機能連関の解析を進める。特に、神経細胞で精力的に解析が進められている細胞内情報伝達の時空間的制御に関する知見の獲得を図る。ここから得られる知見を生化学的解析の結果と統合することにより、アストロサイトの構造機能連関の分子機序の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
平成29年度の早期に発表する予定であった研究成果の論文発表が少々遅れ、その発表関連費用などを29年度ではなく30年度に支出することとなったため。
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