2016 Fiscal Year Research-status Report
ガス分子依存性脳血流代謝カップリング機構の解明:代謝解剖学的アプローチを用いて
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16K07066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梶村 眞弓 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (10327497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一酸化炭素 / 脳血流 / 血管拡張因子 / 二酸化炭素 / Heme oxygenase / 質量分析 / Neurovascular Coupling |
Outline of Annual Research Achievements |
ガス分子は、高分子の構造内に比較的容易に浸透し、金属原子や鉄-硫黄クラスターを有する補欠分子族への結合や、低分子の官能基に特異的に結合することにより生物活性を発揮する。ガス分子の作用は、可逆的・即効的でかつ複数の標的をもつことを特徴とする。それ故に、複数のガス分子とその受容蛋白質が時空的に複雑な相互作用を形成する生体内において、ガス分子の生成・受容及び情報伝達機構と生理作用との因果関係は十分に立証されていない。本研究は、脳組織で産生されるガスの生成・受容機構を探究し、ガス分子によるエネルギー代謝と血流調節のカップリング機構を解明することを目的とした。 CO2は脳血管の強力な拡張物質であることが古くから知られていながらも、拡張の機序・センサー分子の実体は未解明である。正常酸素下でのCO産生量がwild-type(WT)の約半分に低下したHO-2 knockout(KO)マウスの脳では、基底状態のATPが、WTに比べて高値を示すこと、さらにWTでは殆ど影響のない短時間のhypoxia(10% O2,1 min)に対しても、HO-2KOではATPが半減するという興味深い結果を得た・さらに、脳組織のメタボローム解析により、HO-2KOの糖代謝を詳細に解析した。特に、COの標的として脳エネルギー代謝の根幹をなすグルコース代謝に着目し、グルコースの酸化によって産生される二酸化炭素(CO2)の産生量を内因性のCOが制御する可能性の検証を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の仮説を検証することを第一目標とした。 仮説:正常酸素下で産生される内因性COは、糖代謝酵素を制御しCO2産生を恒常的に抑制することで過剰な血流増加を防ぐglucose sparingのmaster regulatorである。 研究初年度はGC-MSを用いて脳組織中の内因性のCO2量を定量するための実験系を構築した。具体的には、少量(20 mg)の脳組織sonicateに酸を添加して気相に追い出したCO2をガスクロマトグラフ質量分析機(GCMS-QP-Ultra)で測定することに成功した。HO2-KOマウスを用いた検証に持ち込むところまで準備が整った。おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したCO2の微量測定系の構築に加えて、O2-CO-CO2系が低酸素時の脳血流のリスクマネジメントの一機序となりうるかをin vivoで検証する。二光子励起顕微鏡を用い異なる微小血管レベル(e.g. 毛細血管、前毛細血管、細動脈)で惹起される低酸素応答をreal-timeで精査する。低酸素性血管拡張は、基質(O2, グルコース)の要求が最も高い神経細胞の近傍の血管から拡張シグナルが伝播し、十分のCOが存在する野生型マウスでは顕著に増幅されると予測する。血管径測定に加えて、赤血球速度を計測し血流量を算定する。毛細血管径は、野生型とHO-2KOマウスの間で差が認められないのに対し、赤血球速度はHO-2KOで顕著に早いこと、つまりCOがないと基底状態で血流量が増加することが予備実験により判明している。この実験系では、個々の毛細血管の位置、血管径、分岐・合流点における赤血球の分配パターン等を、HO-2の発現パターンを勘案しつつ、局所的なneurovascular coupling調節機構を洗い出したい。
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Causes of Carryover |
平成28年4月1日付けで研究代表者の梶村の本務先が慶應義塾大学医学部信濃町キャンパスから同医学部日吉キャンパスに異動になったことに伴い、当初予定していた備品購入が予定どおり施行できなかったことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究年度2年目の2017年度は、昨年度購入を予定していた備品を早期に購入し研究の活性化に努める予定である。
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[Journal Article] Cystathionine β-synthase and PGRMC1 as CO sensors2016
Author(s)
Kabe Y, Yamamoto T, Kajimura M, Sugiura Y, Koike I, Ohmura M, Nakamura T, Tokumoto Y, Tsugawa H, Hand H, Kobayashi T, Suematsu M
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Journal Title
Free Radic Biol Med
Volume: 99
Pages: 333-344
DOI
Peer Reviewed
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