2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07069
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 末梢神経髄鞘 / シュワン細胞 / NEDD8 / neddylation / ユビキチン / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、髄鞘paranode部分にneddylation関連分子が集積していることから、この部分におけるneddylation等の翻訳後修飾の役割を明らかにすることを目的としている。このため研究期間内に、1)末梢神経内でneddylationされる分子の同定、2)neddylation阻害による髄鞘および軸索機能変化の解析、3)neddylation阻害による脱髄モデルの病態変化の解析を行うことを予定している。本年度は1)の分子を同定する目的で、まずマウス末梢神経全画分、膜あるいは細胞質画分を用いたウエスタンブロット解析を行うとともに2)のneddylation阻害に関する検討を行った。neddylation阻害には、NEDD8-activating enzyme (NAE)阻害剤MLN4924の神経内投与を行うことから、この検討を行った。また1)では、抗NEDD8抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果、全画分では分子量約55~70 kDa付近および40 kDa付近に各々複数の特異的バンドが認められた。各画分と抗体との反応生からこれらの分子は膜および細胞質画分の両方に認められる分子と細胞質のみにあるものに分けられた。陽性バンドはいずれも主な既知の髄鞘構成タンパク質と一致しないため、これらを同定するために膜タンパク質の分離にも優れる陽イオン界面活性剤を用いた2次元電気泳動法(CTAB/SDS-PAGE)およびウエスタン解析を行い陽性スポットを確認し、それらをパンチアウトしてMASS解析を試みた。しかし、免疫染色では明らかなスポットとして同定できたが、実際のタンパク質量が少なくMASS解析では分子の同定に至らなかったことから、現在これらの分子の濃縮方法を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究者は、これまでにCTABのような陽イオン界面活性剤を用いた2次元電気泳動法においてすでに主な末梢神経髄鞘タンパク質のスポットを同定している。今回の2次元電気泳動解析では、NEDD8陽性スポットはいずれもこれらの既知のスポットとは一致しなかった。量的には比較的少ないためにこれまでに同定されていなかった可能性があることからこれらの分子を同定し、それぞれの役割を明らかにすることが重要であると考えている。パイロット実験において免疫染色上では十分に同定可能と考えていたため、当初の予定と比較して多少時間がかかっている点はあるが方策はすでに考えられていることから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に明らかになった点として、末梢神経内でneddylation修飾を受けている分子が比較的限定されていることが挙げられる。このため、これらの分子を同定し、阻害による影響を調べたり脱髄等の病態における変化を調べることにより、末梢神経系におけるneddylation修飾の役割を明らかにできると考えている。これらの分子が量的に少ないことがMASS解析できなかった原因であるが、蛍光染色や銀染色による分子の染色性に比較して抗NEDD8抗体による免疫染色性が高いことから、抗NEDD8抗体を用いた免疫沈降を行う予定である。また、NAE抑制剤投与に関しては、当初予定していた神経内投与の他に腹腔内投与も行い、比較することによりより安定したモデルを作成する予定である。また、NAE抑制によるneddylation阻害実験に問題があった場合には、次年度の実施計画に示したようにNAEによるneddylation抑制のほかにNEDD8 conjugating enzymeであるUBC12の変異体cDNA(dominant negative)の利用も検討する予定である。なお、本年度出席したアメリカ神経化学会(2017年3月リトルロック, USA)において末梢神経髄鞘異常を示す複数のマウスを有する研究者と本研究に関するdiscussionを行い、分子の同定やNAE抑制などの結果に応じた共同研究の可能性が得られたため、今後検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、動物モデル作成および維持管理・供給のために実験補助員を雇うための人件費および論文投稿料を計上したが、本年度は論文投稿料が発生しなかったこと、卒論生等の協力により実験補助員の必要がなかったことなどから予定よりも少ない出費となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の結果から、次年度にはより多くの動物を扱うために実験補助員を当初の予定(週1回4時間程度)から週2回に変更する予定である。また、動物実験の増加により物品費も増加する。論文投稿費も含め、繰越金はこれらに対して補填し、有効に使用する計画である。
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