2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07069
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 末梢神経髄鞘 / シュワン細胞 / NEDD8 / neddylation / ユビキチン / 翻訳後修飾 / 脱髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、髄鞘のparanode部分にneddylation関連分子が集積していることから、この部分におけるneddylationなどの翻訳後修飾の役割を明らかにすることを目的としている。このため研究期間内に、1)末梢神経内でneddylationされる分子の同定、2)neddylation阻害による髄鞘および軸索機能変化の解析、3)脱髄モデルの病態へのneddylationの影響の解析を行うことを予定している。昨年度のウエスタンブロット解析により、正常末梢神経組織では分子量約55-70 kDa付近に複数の特異的バンドが認められた。そこで、本年度は1)および3)を目的として、この解析に適した脱髄病態関連モデル動物の解析を行った。末梢神経髄鞘タンパク質の約50%を占める主要接着分子であるP0の遺伝子の異常は、ヒトにおいて脱髄あるいは軸索変性を主体とするCharcot-Marie-Tooth病(CMT)を引き起こすことが知られている。そこで、CRISPR- Cas9法によるゲノム編集技術を用いて作製されたP0遺伝子改変マウスに対して、表現型を解析した。その結果、この遺伝子改変マウスにおいて顕著な脱髄が生じ、ヒトCMTと類似の末梢神経の形態異常、神経伝導速度の低下および神経症状が出現することを明らかにした。最近、P0遺伝子異常を伴うCMTの病態形成にユビキチンープロテアソーム系が関与することが報告されている(VerPlank et al, 2017)。neddylationはユビキチン系の調節に関わる可能性があることから、計画3)に掲げた脱髄におけるneddylationの役割を解析するのに適した動物モデルを準備することができた。本年度の研究成果は次年度に開催される国内および国際学会に発表する予定であり、論文も現在準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的を達成するには、適した動物モデルを持つことが必須であり、その点では本年度新たに解析した「P0遺伝子改変による脱髄マウス」という最適なモデルマウスを手にできたことは大きな収穫と考えている。また、解析に必要な動物数を十分に供給できる体制も準備することができた。次年度にはこれらの遺伝性あるいは炎症性脱髄疾患モデルを用いてneddylationを中心とした翻訳後修飾がどのように脱髄病態に関係するか解析を進めていく予定であり、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)から3)の目的を遂行するため、本年度作製した遺伝性あるいは炎症性脱髄モデル動物を用いてneddylationなどの翻訳後修飾の関連性を解析する予定である。また、正常および脱髄状態の神経においてneddylationされる分子の解析をすすめると共に、コントロールおよび脱髄モデル動物におけるneddylation阻害による影響を解析することにより、研究期間内にneddylationの生理的状態あるいは病態時における意義を調べる予定である。動物モデルはすでにあるため解析の準備は整っている。
|
Causes of Carryover |
本年度は本実験に用いる遺伝子改変マウスの準備と解析を中心に行ったが、次年度には実験に多くのの遺伝子改変マウスの準備および炎症性脱髄モデルラットの作製を予定している。また、タンパク質同定のためのMASS等の解析を外注にて実施する必要があることからより多くの予算が必要である。また、すでに次年度に学会発表が予定され、カラーの図を含む論文も投稿準備中である。これらの実施のため、できるだけ多くを次年度に使用できるように調整した。
|