2016 Fiscal Year Research-status Report
炎症抑制エフェクター欠損株を利用した細菌感染病態の解析
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16K07083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真田 貴人 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (00569957)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 赤痢菌 / 宿主免疫応答 / 動物感染モデル / III型分泌タンパク質 / OspI / 炎症抑制エフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
3つの感染モデルの感染応答を調べることによって、野生型赤痢菌が発現を抑制している 炎症性サイトカイン、ケモカイン群、細胞表面発現タンパク量を同定することを目標とした。 モルモット直腸感染モデルにおいて、感染16および24時間後の直腸組織内の赤痢菌生菌数 (Colony forming unit: CFU)を測定した結果、感染16時間後においては野生型とospI欠損株との間で差は認められなかったが、24時間後のospI欠損株の菌体数は、野生株と比べて顕著に低下した。 また、感染16時間後のospI欠損株の感染直腸組織における各種炎症性サイトカイン・ケモカイン mRNAの発現量をReal-time PCR法によって定量し野生型とospI欠損株で比較した。その結果、ospI欠損株を感染させたモルモット結腸組織でのサイトカイン・ケモカイン mRNAは野生株感染よりも増加した。同様の傾向は、マウス腸管結紮ループ感染モデルにおいても認められた。 さらに、赤痢菌がどのような組織から侵入し、定着に至るのかについて経時的に調べるため、赤痢菌感染組織における赤痢菌の分布を、蛍光免疫 染色法によって調べた。感染16および24時間後のモルモット結腸組織切片を蛍光免疫染色後、共焦点レーザー顕微鏡によって組織内に侵入した赤痢菌の分布を調べた結果、感染16および24時間後の組織では、赤痢菌は直腸上皮細胞内に多く認められた。CFU測定の結果と一致して、24時間後の組織においてはospI欠損株の組織内菌体数の減少が認められた。 以上の結果から、OspIは、赤痢菌が組織内に感染・侵入後に生じる宿主免疫応答を抑制し、宿主に効率良く定着するために重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は炎症抑制タンパク質OspIの機能を個体レベルで解析するために、モルモット直腸感染モデルを実施した。その結果、細胞レベルで明らかにされたOspIの役割をモルモット直腸感染モデルにおいても確認できた。具体的には、赤痢菌感染後の直腸における炎症性サイトカインの産生量、盲腸組織での赤痢菌の分布、盲腸組織内の赤痢菌生菌数の測定を実施し、予想した範囲の結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、赤痢菌が自身の定着のために抑制している免疫担当細 胞の特定と、その詳細な作用機序を個体レベルで調べることを目標とする。初 年度の結果をもとに、野生型赤痢菌が、発現量を抑制している炎症性サイトカイン、ケモカイン群、 細胞表面発現タンパク質群の候補を絞ると同時に、野生型赤痢菌が侵入、定着の際に抑制する標 的免疫担当細胞を推定し、その抑制機序について詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
サイトカインの定量に関する実験が今年度までに一部実行できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、前年度に実行できなかったサイトカインの定量に関する実験を行うために使用する計画である。
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Research Products
(1 results)