2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new treatment model for placental dysfunction
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16K07091
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
磯谷 綾子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20444523)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発生工学 / 実験動物 / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤は、母体が胎児を育てるために欠かせない臓器であり、その機能不全は、着床障害、不育症の原因にもなる。しかし、胎盤機能不全の抜本的な治療方法は確立されていない。動物実験モデルとしては、テトラプロイド補完法が有名であるが、別の受精胚が必要になる。また、過去に所属していた研究室では、胎盤特異的遺伝子導入法が確立されており、この方法では別の受精胚を必要としなかったが、原因遺伝子が同定されていなければ適用できないため治療モデルとしての限界がある。そこで本研究では、他の胚や遺伝子導入法を用いない新たな胎盤機能不全に対するレスキューモデルの構築を目指した。 平成28年度までに確立していた培養細胞を胎盤に寄与させる方法では、細胞融合タンパク質のHVJを用いていた。しかし、この方法では、受精胚の割球同士が融合してしまい、目的の受精卵を得るには非効率的だった。このため、平成29年度ではHVJを用いない方法を開発した。この方法では、培養細胞を処置したほぼすべての受精卵が目的のものとなり、HVJを用いた場合と同程度の効率で培養細胞由来のゲノムが胎盤に寄与することが確認できた。また、胎盤機能不全レスキューモデル用の受精卵採取の効率化を図るために、胎盤機能異常モデルとして樹立したEts2ヘテロ変異マウス同士を交配させて得た受精卵よりEts2ホモ変異ES細胞を樹立し、定法のテトラプロイドコンプリメンテーション法によって、Ets2ホモ変異個体を作製した。一方、胎盤への寄与率を改善するために、培養条件、ならびに培養細胞の種類を検討していたが、劇的な改善は見られていない。そこで、胎盤への分化がおこりやすくなることを期待して、薬剤誘導性発現のCdx2トランスジーンを持つ培養細胞を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、これまで問題となっていた培養細胞を胎盤に寄与させるための受精卵の作出方法の効率について、新たな手法を試みることで、効率化を図ることができた。 また、胎盤機能レスキューモデルを検証するため、胎盤機能不全となる遺伝子ホモ変異体の受精卵採取が必要になるが、ヘテロ変異同士の交配では、4分の1しかホモ変異を持っておらず、残りは不要なものとなる。そこで、従来のテトラプロイドコンプリメンテーション法でEts2ホモ変異個体を作出できるES細胞を樹立し、ホモ変異個体の量産体制を整えた。このことによって、ホモ変異の受精卵を100%の確率で得られる実験系を確立し、本研究を大幅に促進させることができた。また、このことは、実験動物使用数の削減に繋げることができる。さらに、平成30年度に向けて、培養細胞の胎盤への寄与率を改善するために遺伝子改変培養細胞を樹立することができたため、本研究は、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度中に樹立した培養細胞の胎盤への寄与率を改善するために遺伝子改変培養細胞を用いて、本法における胎盤への寄与率について検討する。 さらに、平成29年度中に樹立した胎盤機能不全の表現型を持つEts2ホモ変異のES細胞を用いて、Ets2ホモ変異個体を量産し、本法において、Ets2欠損による胎盤機能をレスキューできるかどうかを検証する。また、Ets2欠損以外の胎盤機能不全遺伝子欠損受精卵をゲノム編集技術を用いて作製し、本法において、胎盤機能をレスキューできるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
前倒し支払い請求の内、試薬消耗品等の節約により一部に残予算が出たため、次年度の計画に補填する。
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