2017 Fiscal Year Research-status Report
肺パスツレラの細菌分類の再編と病原因子に基づく検出法の開発
Project/Area Number |
16K07095
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
佐々木 啓 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20384969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保原 禅 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 教授 (00221937)
池 郁生 国立研究開発法人理化学研究所, その他, 研究員 (40183157)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肺パスツレラ / 食作用 / 全ゲノム / 細菌分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の一つの目標は肺パスツレラ(Pasteurella pneumotropica)の細菌分類再編であったが、昨年度報告したとおり2017年度ベルギーとオランダの研究グループが肺パスツレラを含むげっ歯類感染性のパスツレラ科細菌分類再編を発表した(Int J Syst Evol Microbiol. 2017 Jun;67(6):1793-1806.)。当該研究がこの分野でイニシアチブをとれなかったのは大変残念な結果ではあるが、公表直前にベルギーとオランダの研究者から概要について連絡があり、こちらの蓄積データ数とは比較にならないほど膨大なデータであることがわかり賞賛に値する分類再編データだと考えられる。100株に近い野生株の全ゲノム比較を行っており、Rodentibacter spp.という新属とR. pneumotropicusという代表種のほか、複数の新種から構成され、従来の生物型は廃された。 これらの情報を踏まえて、本研究では細菌分類再編を検証していくとともに一旦実験は保留とし、伝播性や病原性因子解析の試験に注力した。伝播性については、実験的に接触感染で肺パスツレラが伝播したときの感染個体の病態変化について調べたところ、ほぼ実験的に経鼻腔感染した結果と同じような時間で免疫不全マウス(NOD-scid)が肺炎を発症することが観察された。また1匹ののみ感染させた場合でも同じケージであれば残るすべての非感染個体に伝播していくことも観察された。 さらに病原性については、マウスマクロファージと肺パスツレラを培養したときに、食作用が行われることが確認された。しかしながら、マクロファージ内で72時間以上生存しており、その間マクロファージ内で増殖していることも確認された。マクロファージの殺菌・消化作用から逃れる細菌側の因子について特定を急いでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細菌分類再編を除くと、病原因子についてはおおよそ特定されてきており、同定や検出の標的遺伝子やタンパク質は決定してきている。しかしながらその機能については不明なところが多く、病原因子という病原体の根幹について急ぎ解析している。とくにRTX毒素の機能、Lspタンパク質というリン酸化タンパク質、Cdiタンパク質という同属同種を認識するタンパク質、食作用に対して抵抗性を持つ機能などに焦点を絞り詳細な機能特定を進めていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
ベルギーとオランダのグループが発表した肺パスツレラ分類のデータについては、非の打ち所が無い膨大なデータで構成されているが、これまで国内では肺パスツレラと総称された菌種が複数種にまたがってしまっている。これまで国内で肺パスツレラと同定された菌株の中には新属Rodentibacterの中でもR. pneumotropicusやR. heyliiなどの中心的な種ではなく遺伝的に離れた種も存在していたと考えられる。新属の中でもどの種までが従来の肺パスツレラに相当するのか検証が必要と考えられる。微生物モニタリングにおける細菌分類再編の影響についても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
新属提唱が他研究グループから行われ、研究計画の変更が余儀なくされている。大規模シーケンスや次世代シーケンスに使う予定額を細胞購入やメンテナンス費用に使用しており差額が生じている。
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