2017 Fiscal Year Research-status Report
多種疾患に関与するPhldb1ゲノム多型を標的とした新規モデルマウスの開発と応用
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16K07098
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
和田 健太 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (20508113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 邦枝 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (40291158)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Phldb1 / 白内障 / 水晶体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな柱の一つは、Phldb1の点突然変異を原因とする水晶体脱臼性白内障マウス、rlc2をモデルとして、水晶体におけるPhldb1の役割を明らかにすることである。本年度は、rlc2マウスにおける水晶体の表現型解析、Phldb1の発現解析およびRNA-seq解析を行った。 rlc2マウスの水晶体における詳細な表現型解析を行った結果、2ヶ月齢におけるrlc2マウスの水晶体は透明性を維持しつつも、水晶体後極部から脱臼の過程にあり、3ヶ月齢には混濁を伴う完全に脱臼した水晶体核が観察された。この結果は、rlc2マウスの水晶体はその変性によって脱臼するのではなく、水晶体核の脱臼を原因として混濁を引き起こすことを示した。 また、胎子期の水晶体においてPHLDB1は水晶体上皮よりむしろ前眼部のカプセルに局在が認められた。もし、PHLDB1が水晶体の基底膜様組織であるカプセルに局在しているとすれば、水晶体にはPHLDB1の新たな機能が存在する可能性がある。次年度はPHLDB1と水晶体カプセルおよび水晶体上皮マーカータンパク質との共局在の有無を調査し、その局在について検証したい。 次に、いくつかの水晶体繊維細胞のマーカーおける免疫組織化学的解析を行った結果、それらのほとんどに野生型との差異は認められなかった一方で、SPARCは、rlc2マウスの水晶体後極部に野生型にはみられない凝集が観察された。 さらに、RNA-seq解析では、1週齢、3週齢および6週齢のそれぞれに共通して27種類の遺伝子に有意な発現変動が認められた。一方、rlc2に検出された発現変動遺伝子は、それぞれの週齢で別々のGO termに高い関連性が認められた。このことは、水晶体におけるPHLDB1が水晶体の成熟ステージにおいて異なる機能を有することを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作製したPhldb1のゲノム編集マウスの繁殖性が低く、目的のゲノム編集マウスが未だ樹立できていない。また、水晶体の解析に時間を割いたために、脳における表現型解析の進行はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はPHLDB1と水晶体カプセルおよび水晶体上皮マーカータンパク質との共局在の有無を検証し、加えて水晶体後極部におけるSPARCの詳細な発現解析を進める。また、RNA-seqについては詳細なデータマイニング、ならびにqRT-PCRおよびウエスタンブロット解析などの検証実験によって、水晶体カプセルの崩壊に関与する遺伝子群を明らかにしたい。これら研究を実施するとともに、遅れているゲノム編集マウスの開発・樹立を継続して行い、目的の系統樹立のために努力する。さらに、脳組織における表現型解析を進め、GFAP抗体を用いた免疫組織染色によってアストロサイトの観察を行い、rlc2マウスの脳組織における病態の有無を検証する。
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Causes of Carryover |
在庫がなく、申請者所属機関の支払い処理期間に間に合わなかったPCR関連試薬を用いた解析を、次年度に延期したため。
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