2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト化肝臓マウスを用いたヒト特異的肝毒性評価法の開発と毒性発症機序の種差の解明
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16K07102
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
末水 洋志 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 部長 (40332209)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒト肝キメラマウス / 薬剤性肝障害 / 肝毒性 / バイオマーカー / Plasma circulating RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肝臓を生体内で再構築したHumanized-liver TK-NOGマウスを用いた薬剤性肝障害モデルでは、宿主マウス肝臓と再構築ヒト肝臓の両方が薬剤の影響を受け肝傷害が引き起こされることから、動物種特異的な肝毒性評価が行えると考えた。一般にALTやAST活性等の血液生化学検査により肝毒性が予測され、病理解析により評価されるが、酵素活性測定ではヒトALT活性とマウスALT活性を分別することはできない。一方、病理組織学ではヒト肝細胞とマウス肝細胞の傷害を区別することは可能であるが、高価なHumanized-liver TK-NOGマウスを多数必要とする。そのため、使用動物数を削減し、経時的な肝毒性評価を可能とする「種特異的肝毒性評価法」の確立が必要となった。 変性・壊死した肝細胞から漏出する成分のうち、核酸(特にmRNA)はPCR法により容易に検出することができるため、本研究の検出対象として好適と考えた。漏出分子の数は傷害強度だけでなく細胞内含量(遺伝子発現量)に依存することから、はじめにHumanized-liver TK-NOGマウス肝臓における遺伝子発現を網羅的に解析し、5つの遺伝子を検出候補として抽出した。ヒト、マウスのそれぞれの遺伝子について相同性を調査し、種特異的に検出できるプライマー/プローブを作製した。ヒト、マウスの遺伝子それぞれを同時に検出するため、2色の蛍光色素を用いたマルチプレックスPCR系を確立した。また、血液中に逸脱したRNAの精製、逆転写、定量PCRの工程が首尾良く行われたことを確認するため、血漿検体にスパイクRNAを添加した。4つの候補遺伝子のうち最も特異性が高く、感度が良好なアポA遺伝子を選出し、d-ガラクトサミン肝傷害マウスの血漿を分析したところ、漏出RNAの大部分がマウス由来であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞変性時に漏出するmRNAを検出する場合、遺伝子発現量が高い遺伝子ほど検出は容易になると考えられる。そこで異なるドナー肝細胞で作製したHumanized-liver TK-NOGマウスについて2種類の網羅的遺伝子発現解析(Human 3’ IVTアレイ解析、Human GeneST解析)を行い、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)に対して発現の高い遺伝子を抽出した。いずれの解析法においてもアルブミン遺伝子の発現は上位にあった。アルブミン遺伝子の他、比較的発現の高い遺伝子アポA、アポB、 アルドラーゼ遺伝子について、それぞれ、ヒトを特異的に検出するプライマー/TaqManプローブ(プローブ)、マウス特異的プローブ、および、ヒトとマウスを同等に認識する共通プローブを設計した。ヒト肝cDNA、および、マウス肝cDNAを用いてそれぞれのプローブの特異性を検証したところ、いずれのプローブも種特異的であることが確認できた。次にヒト由来mRNAとマウス由来mRNAを同一チューブ内で同時に検出するため、ヒト特異プローブとマウス特異プローブを混合し、マルチプレックスPCRによりそれぞれのプローブの反応性を検証した。その結果、組合せにより反応性が衰えるプローブや干渉するプローブがあることが判明した。マルチプレックスPCRで反応性の低下や干渉が見られなかったアポA遺伝子を種特異的検出マーカーとして選択した。当該プローブの対象配列を人工合成し、既知濃度の鋳型DNAとして検量線を作製した。キメラ率約50%のHumanized-liver TK-NOGマウスにd-ガラクトサミンを投与したところ、24時間後にALTの上昇が認められた。この血漿をヒト特異プローブとマウス特異プローブで分析したところ、マウス由来の漏出RNAの方が多いことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の目標であったヒト/マウス肝細胞由来mRNAの検出・分別が可能なPCRプライマー/TaqManプローブ(プローブ)の絞り込みは順調に進んだ。血漿検体にスパイクRNAを添加することにより精製、逆転写、定量PCRの工程において検体が分解されることがないことも判明した。初年度に実施したd-ガラクトサミンによる肝障害では、ALTの上昇に比しmRNAの血漿中への漏出が軽度であったことから、次年度には採血から血漿分離、凍結保存の過程でのmRNAの安定性を調べる予定である。また、漏出mRNA量が少なく十分な検出感度が得られていなかったことも想定し、微量核酸の定量的検出に有利なデジタルPCR法による解析を外注検査する予定である。これと平行して各種薬剤による肝傷害誘導条件を検討する。また、種特異的肝毒性評価の分析手法としてヒト細胞内のタンパクを特異的に検出するELISAの検討にも着手する。
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Research Products
(1 results)