2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07108
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 光代 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80400448)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Bach1 / 癌 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞によって悪性化に転じた線維芽細胞は「cancer-associated fibroblasts (CAFs)」と呼ばれ、サイトカイン等の分泌刺激を通して、局所的にがん細胞の増殖を助けることが知られている。これまで我々はin vitroにおける癌細胞とマウス胎児線維芽細胞(MEFs)との共培養実験からBach1欠損MEFsが野生型MEFsに比べ癌細胞の増殖を促進することを見出している。これらの知見から、Bach1欠損線維芽細胞がヒト癌細胞に与える効果を示すためのマウスモデルとして、本研究ではBach1欠失超免疫不全マウスを作出し、本マウスへのヒト癌細胞移植を通してBach1欠損線維芽細胞の癌細胞への効果をモニターすることを考えた。しかし、Bach1欠損超免疫不全マウスのへ移植癌細胞は、コントロール超免疫不全マウスとの比較において、その増殖に変化をみせず、仮説として考えていたほどの強力なCAFs機能は、昨年同様にみられていない。Bach1は酸化ストレス等の環境刺激によってその発現を変動させることから、移植時および経過観察中における移植癌細胞以外のこの様な刺激が一つの手がかりとなるかもしれず、来年度の課題である。上記結果を受け、CAFsからの視点だけではなく、癌細胞自身におけるBach1ノックダウン効果をみたところ、Bach1ノックダウン癌細胞の形質はある癌種のいくつかの細胞株において特徴的に変化し、RNA-seqの解析から細胞表面タンパク質の発現変化を捉えた。本実験から、今後、癌-線維芽細胞相互作用におけるBach1の効果を癌細胞側および間質細胞側両面から考えるきっかけを得た。また、先行研究との位置づけから、今年度、線維芽細胞以外の間質細胞に与える効果として、同族のBach2がマクロファージやリンパ球の分化を制御していること、およびBach2を欠損したマクロファージではサイトカイン等の炎症系遺伝子の発現が異常亢進することを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、昨年度に引き続きBach1欠損免疫不全マウスへの癌細胞株移植実験を実施した。昨年度同様計画当初の仮定とは異なり、Bach1欠損超免疫不全マウスにおける移植癌細胞の増殖効果は、コントロールとなる超免疫不全マウスと変わらない、もしくはマイルドな効果が得られているに留まっている。一方で、癌細胞内のBach1ノックダウンによる癌細胞形質に与える影響は、ある癌種および細胞種によって特徴的に変化することを見出した。また、同族のBach2においてはマクロファージの分化等の制御に関わっていることを明らかにしており、Bachが線維芽細胞以外の癌-間質細胞相互作用効果を持つことが示唆された。今後、癌細胞におけるBach1の効果にも注目し、研究を進める予定である。また、間質(線維芽細胞)を介したBach1の効果には腫瘍細胞以外のストレスが重要である可能性があり、この点も考慮したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのin vitroの解析ではBach1欠失MEFsは癌細胞の増殖を促進させたが、Bach1欠損超免疫不全マウスへの癌細胞移植実験では、マイルドな効果しか観察できていない。In vitroの時とは異なるこの結果の理由の一つに、腫瘍細胞による刺激だけでなく、他の刺激が必要な可能性が考えられる。我々はこれまでの研究からBach1欠損MEFsは脂肪細胞への分化が容易になることを報告している。脂肪細胞からの分泌物は癌細胞の増殖に影響することが報告されている。従って、2018年度は、高脂肪食を与える、酸化剤の投与といった刺激を加えた時の腫瘍細胞の増殖変化を観察することを検討したい。一方で、癌細胞自身のBach1をノックダウンしたところ、癌細胞の形質が変化することが見出されたので、この効果のメカニズムを探るために、癌細胞におけるBach1のChIP-seq解析を行うことで、Bach1のヒト癌細胞における直接標的遺伝子を同定する。
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[Journal Article] Phosphorylation of BACH1 switches its function from transcription factor to mitotic chromosome regulator and promotes its interaction with HMMR.2018
Author(s)
Li J, Shima H, Nishizawa H, Ikeda M, Brydun A, Matsumoto M, Kato H, Saiki Y, Liu L, Watanabe-Matsui M, Iemura K, Tanaka K, Shiraki T, Igarashi K.
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Journal Title
Biochemical Journal
Volume: 475
Pages: 981~1002
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Inflammatory responses induce an identity crisis of alveolar macrophages, leading to pulmonary alveolar proteinosis.2017
Author(s)
Ebina-Shibuya R, Matsumoto M, Kuwahara M, Jang KJ, Sugai M, Ito Y, Funayama R, Nakayama K, Sato Y, Ishii N, Okamura Y, Kinoshita K, Kometani K, Kurosaki T, Muto A, Ichinose M, Yamashita M, Igarashi K.
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Journal Title
The Journal of biological chemistry
Volume: 292
Pages: 18098~18112
DOI
Peer Reviewed
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