2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K07122
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
時野 隆至 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40202197)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | p53 / がん抑制遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
p53はヒト悪性腫瘍で最も高頻度に変異しているが,“がん抑制遺伝子”であるためp53経路をターゲットとした治療薬の開発は遅れている.本研究ではp53による転写制御ネットワークの全貌を明らかにすること目的とする. 本年度は,新規のp53標的としてp120カテニンファミリ遺伝子を同定し,その機能解析を行い,発がんにおける役割を考察した.まず p120カテニンファミリ遺伝子を新規の53標的遺伝子として同定した.細胞レベルの研究から,この遺伝子はp53誘導アポトーシスの制御機構に関連する因子の1つである可能性を示唆する結果を得た.癌細胞において,このp120カテニンファミリ遺伝子の低発現は細胞間接着を変化させ,その結果として癌の浸潤・転移を促進する可能性を示唆する結果も得た.このp120カテニンファミリ遺伝子産物はmRNAスプライシング制御に関連し,さまざまな遺伝子産物の機能に影響を及ぼすと考えられた.すなわち,このp120カテニンファミリ遺伝子はp53シグナル経路にポジティブフィードバックに作用すると考えられる.さらに公開されているデータベースの解析から,この遺伝子の低発現が複数の癌種において生存率の低下につながることを明らかにした.本研究結果は,p53変異によるこの遺伝子発現減少と予後増悪との相関の基盤となる分子メカニズムを示している可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として,p120カテニンファミリ遺伝子が転写活性化因子p53の直接の転写標的であることを見出した.これまでこの遺伝子産物については,細胞質においては細胞接着および細胞運動,核内においてはmRNAスプライシングへの関与が報告されている.本研究では,クロマチン免疫沈降物の次世代シーケンサ解析(ChIP-seq)データを利用して,この遺伝子のp53応答配列候補を探索し,RE1およびRE2を同定した.ChIP-PCR法およびレポーターアッセイ法により,RE1およびRE2配列がp53応答配列であることを確認した.さらに,複数の癌細胞株においてp53強制発現系および内在性p53発現誘導系を用いて,正常型p53によるこの遺伝子の発現誘導を転写レベル,タンパクレベルで確認した.また,この遺伝子が影響を及ぼすmRNAスプライシングをRNA-seqにより解析し遺伝子オントロジー解析を行うことによって,このp120カテニンファミリ遺伝子がタンパク結合および細胞間接着に関連する遺伝子群の選択的スプライシングを変化させることを見出した.すなわち,本研究では癌におけるp53変異によってこのp120カテニンファミリ遺伝子の発現が減少し,数100遺伝子のmRNAスプライシングが変化する.この選択的スプライシングの変化およびp53標的遺伝子の選択性を介してさまざまな遺伝子産物の機能に影響を及ぼし,その結果 p53誘導アポトーシスの抑制が惹起され,がん患者の生存率の短縮につながる可能性を提唱できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,いくつかの研究結果について検証実験を実施し再現性等を確認する.最終的には,本研究結果を論文にまとめ,査読付き学術雑誌に投稿予定である.また,本研究成果を日本癌学会など国内学会に研究発表する計画である.
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Causes of Carryover |
1.本研究結果である「新規p53標的遺伝子として同定されたp120カテニンファミリタンパクの発癌における機能解析」について,研究業績として雑誌論文に投稿するため,再現性の検証実験を実施する必要がある. 2.査読有りの雑誌に投稿する計画であるが,雑誌編集者を介して査読者から追加実験を求められることが多く,追加実験の実施に使用する計画である. 3.英文の学術雑誌への論文投稿および受理にあたり,英文校正料および論文掲載料等が必要である.
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[Journal Article] Dysregulation of miRNA in chronic hepatitis B is associated with hepatocellular carcinoma risk after nucleos(t)ide analogue treatment2018
Author(s)
Wakasugi H, Takahashi H, Niinuma T, Kitajima H, Oikawa R, Matsumoto N, Takeba Y, Otsubo T, Takagi M, Ariizumi Y, Suzuki M, Okuse C, Iwabuchi S, Nakano M, Akutsu N, Kang JH, Matsui T, Yamada N, Sasaki H, Yamamoto E, Kai M, Sasaki Y, Sasaki, Tanaka, Yotsuyanagi, Tsutsumi, Yamamoto, Tokino T , Nakase H, Suzuki H, Itoh F
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Journal Title
Cancer Letters
Volume: 434
Pages: 91~100
DOI
Peer Reviewed
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