2016 Fiscal Year Research-status Report
新規がん遺伝子Zfp57による細胞がん化の分子機構の解析
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16K07126
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小出 寛 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (70260536)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん遺伝子 / Zfp57 / がん転移 / インプリンティング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにES細胞に発現している転写因子Zfp57が、種々のがん組織におけて過剰発現しており、また腫瘍形成能、細胞がん化能を持つ新規のがん遺伝子として見出してきた。本研究はこの発見をさらに発展させ、がんの特徴である「腫瘍形成」「転移」「loss of imprinting」におけるZfp57遺伝子の機能を分子生物学的に解明することを目的とした。 そのために本年度はまずZfp57の下流分子の探索を行った。方法としては、ヒト繊維肉腫由来HT1080細胞やマウスES細胞において、Zfp57遺伝子のノックダウンやノックアウトを行い、それらの細胞のDNAアレイ解析を行うことによって、Zfp57の発現抑制によって発現量に変動があった遺伝子を探索した。さらに、発現量に変動があった遺伝子のうちのいくつかの遺伝子についてはリアルタイムPCRによってその確認を行った。その結果、Grxcr2、Ecm2、Pi3、Prrx2や、インプリント遺伝子Peg3などをZfp57の下流分子の候補として同定した。 またHT1080細胞の肺転移モデルや大腸がん由来HT29細胞の肝転移モデルにおいて、Zfp57の過剰発現の効果を調べたところ、どちらのモデル系においてもZfp57の過剰発現によって移植したがん細胞の転移が促進された。さらにヒトの臨床サンプルを用いてZfp57の免疫組織染色を行ったところ、転移陽性の原発巣の方が 転移陰性の原発巣に比較してZFP57 の発現率が有意に高いことや、転移巣においてZFP57 が非常に高い確率で高発現していることを見出した。これらの結果から、Zfp57が腫瘍形成だけでなく、がん細胞の転移においても重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Zfp57の下流分子、下流インプリント遺伝子、および結合分子の同定を行うとともに、マウスを用いてがん細胞の転移におけるZfp57の関与の可能性を検討する計画であった。実際に下流分子の探索を行った結果、インプリント遺伝子を含むいくつかの下流遺伝子の同定に成功した。またマウスを用いた実験からZfp57のがん転移への関与を見出した。当初予定していたZfp57の結合分子の同定には成功していないが、その一方で、次年度に行う予定であったヒト臨床サンプルを用いた解析を行ってヒトのがん転移におけるZfp57の関与を見出している。これらのことから、総合的に判断すると、研究はおおむね予定通りに進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に同定できなかったZfp57の結合分子の探索を行うとともに、本年度に見出した下流分子に関して、腫瘍形成や細胞がん化への関与の有無を調べて、Zfp57による腫瘍形成促進機構を調べていく。また本年度の結果からZfp57のがん転移への関与も示唆されたので、見出した下流分子を手掛かりとしてZfp57によるがん転移制御機構についても分子レベルで解析を進めていく予定である。
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