2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムワイド解析による進行肺がんの治癒実現へ向けた基盤研究
Project/Area Number |
16K07128
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
久保 昭仁 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60416245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
洪 泰浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80426519)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肺癌 / 長期生存 / 次世代シーケンシング / ゲノムワイド解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
IV期肺がんにおいて治癒は見込めない。 一般的にはそのように考えられている一方で、非常にまれながら臨床的治癒にきわめて近いIV期症例が存在する。そのような稀少な症例を体系立てて集積し、その臨床的特徴とゲノム解析等で同定される分子生物学的特徴を比較検討した試みは無い。 本研究の目的は、極めて良好な治療経過をたどったIV期肺がん症例の全貌を検討し、IV期肺がんを臨床的治癒に結びつける要因を明らかにすることで、肺がんのさらなる個別化医療実現へ向けた基盤の確立を目指すことである。 本研究では、化学療法が著効し長期間無治療で寛解が維持されているIV期肺がんまたは中皮腫の症例を対象とし、以下の検討をおこなう。(1) IV期肺がん・中皮腫長期寛解維持症例から採取した検体を用いて全エクソーム解析にて遺伝子変化を網羅的に検索する。それらの臨床的特徴 (組織型、治療反応性等)との統合解析を行い、IV期肺がん・中皮腫の治癒に関与する分子プロファイル・マーカーを探索的に検討する。(2)分担/連携研究者の所属する共同研究施設における症例についても同様の検討を行う。(3) 同定した治癒に関与する遺伝子変異等の分子プロファイル及びマーカーを細胞株モデルにおいて検討し、創薬へ向けての橋渡しとなる前臨床データを取得する。 これまでに化学療法が著効し、無治療で無再発が2年間以上維持できている検討候補症例を4例同定した。本研究は現在研究計画の倫理承認待ちである。この間に本研究の基盤研究である肺がん手術症例を対象とした大規模分子疫学研究を完遂し報告した (Kawaguchi, J Clin Oncol, 2016)。本研究に関連して肺がんのドライバー遺伝子異常と受動喫煙に関する国際共同研究を完成し論文化した (Kubo, Clin Lung Cancer, 2017)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究対象症例の選択基準は、1) 病理学的確定診断のあるIV期肺がんまたは中皮腫、2) 年齢20歳以上、3) 化学療法が奏効し(完全寛解CRまたは部分寛解PR)、最終治療終了後2年以上無治療で寛解が維持されていること、4) DNA抽出が可能な治療前の腫瘍検体があること、5) 末梢静脈血の提供が可能であること、6) 研究参加への書面によるインフォームドコンセント、である。 適格症例は過去10年間で自験4例が同定され、詳細な臨床情報を得ている。平成28年度は、自験例4例における次世代シーケンスを用いた網羅的遺伝子解析を実施する予定であった。しかし研究計画書の完成に時間を要し未だ倫理承認に至っていない。そのため候補症例からの書面同意、検体採取ができず、28年度研究の主体であった網羅的遺伝子解析は次年度に繰り越しとなった。 一方、本研究の基盤研究である肺がん手術症例を対象とした大規模分子疫学研究 (The Japan Molecular Epidemiology for lung cancer (JME) study; UMIN000008177) を完成させることができた。JME studyは、日本全国43施設から前向きに集積した病期I-III期非小細胞肺癌901症例の切除検体を用いてtargeted deep sequencing を主とする分子生物学的検討を行い、喫煙・受動喫煙を含む環境因子との関連を検討し報告した(Kawaguchi, J Clin Oncol, 2016)。また、本研究と共通する手法を用いて肺がんのドライバー遺伝子異常と受動喫煙に関する国際共同研究を完成し論文化した(Kubo, Clin Lung Cancer, 2017)。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の倫理承認が得られしだい以下の検討を行う。 (1) IV期肺がん・中皮腫長期寛解維持症例から採取した検体を用いて全エクソーム解析にて遺伝子変化を網羅的に検索する。それらの臨床的特徴 (組織型、治療反応性等)との統合解析を行い、IV期肺がん・中皮腫の治癒に関与する分子プロファイル・マーカーを探索的に検討する。(2) 極めてまれな症例集団となるため、分担/連携研究者の所属する共同研究施設における症例についても同様の検討を実施し、さらなるデータ取得を行う。(3) 同定した治癒に関与する遺伝子変異等の分子プロファイル及びマーカーは新規の治療標的となる可能性がある。これらを細胞株モデルにおいて検討し、創薬へ向けての橋渡しとなる前臨床データを取得する。 平成29年度は、自験例4例における次世代シーケンスを用いた網羅的遺伝子解析を実施する。パラフィン包埋腫瘍組織標本からDNA抽出を行い、次世代シーケンシングを実施する。 (1) がん関連72遺伝子からなるホットスポット解析を行うとともに、遺伝子増幅解析(リアルタイムPCR) および蛋白発現解析(免疫染色)を実施する。(2) 次世代シーケンスによる全エクソーム解析を行う。また、各症例から末梢静脈血を採取し、抽出したDNAをがん組織に対する正常対照として用いる。 以後平成30年度にかけて以下の検討を行う。 (1) 自験例4例の臨床情報および網羅的遺伝子解析の統合解析。体細胞変異の遺伝情報解析において、それぞれの化学療法効果との関連、予後因子、がんの組織型等の臨床病理学的因子について探索的に検討を行う。また、本学とともに共同研究施設を通じて新規症例を探索し、症例の追加検討を行う。同定したゲノム異常の新規治療標的としての前臨床評価を行う。 以上の結果をとりまとめ、学会および論文発表を行う。
|
Causes of Carryover |
研究計画書作成から倫理承認までに時間を要しており、本研究の主体である網羅的遺伝子解析実施に至っていないことが予算使用遅延の主要因である。遺伝子解析実施に至らなかったため、28年度予算の大半を占める物品費が全く使用されなかった。物品に関わる経費はすべて消耗品であり、主に次世代シーケンス関連試薬である。情報収集・情報交換等のための学会、打合せ等会議に必要な旅費等はほぼ予定通り使用されている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の倫理承認が得られしだい以下へ進んでいく。(1) 症例登録とインフォームドコンセント取得、(2) 症例から採取した検体を用いて全エクソーム解析にて遺伝子変化を網羅的に検索、(3)臨床的特徴との統合解析を経て分子プロファイル・マーカーを検討、(4) 同定された因子について細胞株モデルにおいて検討。いずれも貴重な症例のため症例報告を含む論文化も予定している。 29年度使用となる予算は、次世代シーケンス関連試薬を含む消耗品等の物品費、論文作成に関する費用、情報収集・情報交換等のための学会、打合せ等会議に必要な旅費等で使用される予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Interstitial Lung Disease after Pleurodesis for Malignant Pleural Effusion2017
Author(s)
Yokoe Y, Katsuda E, Kosaka K, Hamanaka R, Matsubara A, Nishimura M, Tanaka H, Asai N, Takahashi A, Kawamura T, Ishiguchi T, Yamaguchi E, Kubo A
-
Journal Title
Internal Medicine (in press)
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] The ATS/ERS/JRS/ALAT statement "IPF by HRCT" could predict acute exacerbation of interstitial pneumonia in non-small cell lung cancer2017
Author(s)
Asai N, Katsuda E, Hamanaka R, Kosaka K, Matsubara A, Nishimura M, Tanaka H, Yokoe N, Takahashi A, Yamaguchi E, Kubo A
-
Journal Title
Tumori
Volume: 103
Pages: 60-65
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Prospective analysis on oncogenic driver mutations and environmental factors: Japan Molecular Epidemiology for lung cancer study (JME)2016
Author(s)
Kawaguchi T, Koh Y, Ando M, Ito N, Takeo S, Adachi H, Tagawa T, Kakegawa S, Yamashita M, Kataoka K, Ichinose Y, Takeuchi Y, Serizawa M, Tamiya A, Shimizu S, Yoshimoto N, Kubo A, Isa S, Saka H, Matsumura A
-
Journal Title
J Clin Oncol
Volume: 34
Pages: 2247-57
DOI
Peer Reviewed