2017 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞誘導によるクローン性を利用したドライバーおよびパッセンジャー変異の検出
Project/Area Number |
16K07137
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
岡村 浩司 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 室長 (80456194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 色素性乾皮症 / XPA / ERCC2 / ドライバー変異 / パッセンジャー変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は構造変異も含め多くの体細胞変異を保持しており、また増殖に従って新規な変異を蓄積してゆく。これらは、がん化に関わったと考えられるドライバー変異とは異なり、細胞の増殖や生存とは関わりがないものがほとんどでパッセンジャー変異と呼ばれ区別される。がんの発生機序を理解し、予防や治療、創薬に役立てるために多数の体細胞変異の中からドライバー変異を同定することがきわめて重要となるが、診断、変異パターンのプロファイリングからのがんの識別、免疫療法、予後予測などにおいてはパッセンジャー変異の検出も軽視できない。つまり両者を識別して検出することががん研究の一つの課題となっている。これまで、DNA二本鎖切断修復に関与する遺伝子ATMに損傷を持つ毛細血管拡張性運動失調症をモデルとし、罹患者の線維芽細胞からiPS細胞を作製、全エクソーム解析により変異を調べてきた。本研究課題においては、もう一つの重要なDNA修復機構である塩基除去修復に着目し、それに関わる遺伝子のうちXPAおよびERCC2を取り上げ研究を開始した。XPAのスプライシング部位にホモ変異を持つ2名、およびERCC2の複合ヘテロ変異を持つ1名の色素性乾皮症患者からiPS細胞をそれぞれ1株ずつ樹立し、患者線維芽細胞とiPS細胞のそれぞれで全エクソーム解析を行い、ゲノム塩基配列比較を行った。ドライバー変異に相当するXPAやERCC2の変異は一致してたが、多数検出された体細胞変異はそれぞれの細胞株で一致するものはなく、indel変異や構造変異、一塩基置換がジピリミジン(YpY)に集中して見られる、またレトロトランスポジションが多く見られるなど、変異遺伝子それぞれの機能に依存した特徴が観察された。この結果はATM、XPAおよびERCC2のDNA修復における役割の違いを明確に、かつ相補的に示すものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請段階で発表していた毛細血管拡張性運動失調症の論文に加え、DNA修復機構に関しそれと相補的な研究対象となるXPA遺伝子のホモ変異による色素性乾皮症についての論文を発表することができた。また、ヘリカーゼ活性を持つタンパク質をコードするERCC2遺伝子の複合ヘテロ変異を原因とする色素性乾皮症についても調べることができ、これまでと異なる体細胞変異の特徴を見つけることができた。さらなるサンプル収集には困難を感じていたが、宮崎大学との共同研究で日本医療研究開発機構の幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラムに採択され、こちらの研究課題からEC細胞も含めた多くのデータを取得することが可能となった。その目的は機械学習により幹細胞の分化指向性を判断させるもので、できるだけ多くの学習データを揃える必要がある一方、変異検出については特に調べる予定はない。そこでこれらサンプルを本研究課題に活かして、サンプル収集の問題を克服、さらには当初の計画以上の結果を出せる可能性も出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行った全エクソーム解析においては、タンパク質翻訳領域に限定されたベイトではなく、5'および3'両非翻訳領域やノンコーディングRNA領域も含めた約80 Mbをカバーするベイトを用いてゲノム断片の濃縮を行った。通常の全エクソーム解析と比べ、2倍程度の領域に渡って変異検出ができているものの全ゲノムの5%にも満たない。ドライバー変異の検出ができている可能性は高いが、パッセンジャー変異を網羅的に検出することも、体細胞変異のシグネチャーを把握する上で重要となる。2年目はいくつかのサンプルに対して全ゲノムリシークエンシング解析を実施し、良好な結果を得ているので、全研究期間中にできるだけ多くのサンプルに対して全ゲノムを対象とした解析により、より正確なプロファイリングを行なってゆく。また当初予定していないかったEC細胞についても全ゲノムデータを取得できることになったので、これらの結果も踏まえてより一般的な考察を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題採択前に取得していた色素性乾皮症患者の線維芽細胞から樹立したiPS細胞の解析が順調に進み、新たなサンプル収集よりもデータ解析に時間を費やしたため、初年度に次年度使用額が発生した。2年目は当初の予定通り研究を進め、単年度の支出額は収入額よりもやや多かったが、初年度の残額が残っている状況となっている。別な研究課題による宮崎大学との共同研究で、30株程度のiPS細胞を樹立することができた。その課題においては体細胞の変異検出は行わないため、これらを本研究のサンプルとして全ゲノムリシークエンシング、変異検出を本財源により実施する。
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Research Products
(9 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] 細胞判定装置、細胞判定方法及びプログラム2018
Inventor(s)
西野光一郎, 新井, 梅澤, 阿久津, 岡村, 堀家, 犬塚
Industrial Property Rights Holder
西野光一郎, 新井, 梅澤, 阿久津, 岡村, 堀家, 犬塚
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
特願2018-034579