2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07152
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
松村 幸子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 蛋白創製研究部, 特任研究員 (90414052)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞外ベシクル / がん / 基板吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームは細胞から放出されたベシクルで、細胞間で核酸、タンパク質、脂質などの情報を伝達している。この細胞間情報伝達はがんなどの疾患にも深く関わっており、体液中に含まれるエクソソームを利用した非侵襲的な診断(リキッドバイオプシー)に向けた研究が進められている。しかし、細胞はエクソソーム以外の細胞外ベシクルも放出しており、性質も機能も異なると考えられるが、様々なタイプのベシクルの見分け、仕分けは困難である。細胞外ベシクルを分類し、そこから得られる情報を明らかにすることによって、診断の精度の向上が期待できる。本研究はエクソソームの基板への吸着を利用した解析法の開発を目的として研究を進める。 昨年度から引き続き、基板上でエクソソームの内側の分子を検出する手法の検討を進めた。基板に吸着させたエクソソームを界面活性剤で弱く処理し、抗体と金粒子でラベルして原子間力顕微鏡(AFM)で観察を行ったところ、エクソソームの形状を保ったまま、エクソソームの内側の分子を検出することが可能になった。対象の分子がエクソソームの表面あるいはエクソソームとは別に存在するのか、エクソソーム内部に存在するのかをAFMで区別できるようになった。 また、平成29年度は、基板に吸着したエクソソームの形状の違いにも注目した。がん細胞株の培養液から超遠心によってエクソソームを回収し、さらに密度によって分画した。それぞれの分画をAFMで観察したところ、基板上での平均サイズとサイズ分布の広さが異なるベシクルが、異なる密度の画分に存在することを見出した。サイズ分布の広い画分では吸着したベシクルの変形の程度が大きく、体積あたりのタンパク質量や表面電位にも違いがみられた。サイズ分布の広さは、溶液中のナノ粒子解析法では顕著な違いは見られなかったことから、基板吸着によってベシクルの性質の違いを見出すことができることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基板上でエクソソームの内側および外側の分子を検出する方法を確立し、また、エクソソームの性質の違いが基板吸着時のエクソソームの形状の違いに反映されることを示す結果が得られており、おおむね当初の計画どおりに進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度から引き続き、基板上に吸着するエクソソームの形状の違いとエクソソームの性質の関連性について調べる。また、一つの細胞株に由来するエクソソームの中に、性質の異なるエクソソームサブクラスが存在することが明らかとなったので、これらの性質と機能の違いや、他の細胞株にも存在するのかなど、さらに詳しく調べる。
|
Causes of Carryover |
本年度は適切な人材を雇用することができなかったため次年度使用額が生じたが、次年度の雇用費用に充当する予定である。
|
Research Products
(2 results)