2016 Fiscal Year Research-status Report
血漿遊離DNAを用いた小細胞肺癌の新たな低侵襲的診断法の確立
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16K07154
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
梅村 茂樹 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (80623967)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム解析 / 血漿 / 小細胞肺癌 / バイオマーカー / 遊離DNA / 代謝解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 小細胞肺癌血漿遊離DNAの標的遺伝子解析 国立がん研究センター東病院、肺癌データベース(肺癌全体 約17000例)の中から、遺伝子変異プロファイルが分かっていて、新鮮凍結血漿が保存されている小細胞肺癌症例を抽出したところ、10例が抽出された。これら10例につき、年齢、性別、喫煙指数、病期、腫瘍マーカー、再発の有無、生命予後等の臨床因子を抽出した。この小細胞肺癌10例の血漿からゲノムDNA(血漿遊離DNA)を抽出し、244個の候補遺伝子による標的遺伝子解析を実施した。標的遺伝子解析を実施したところ、腫瘍組織から検出されていた37個の体細胞遺伝子変異候補のうち、24個(65%)は、血漿からの検出が可能であった。
2. 小細胞肺癌血漿の代謝解析・メタボローム解析 生命の基本原理(セントラルドグマ)では、代謝産物は、ゲノムDNAよりも表現型に近いところに位置している。標的遺伝子解析の結果得られたゲノムDNAの遺伝子異常に対して、より深い生物学的な意味づけを行う目的で、代謝解析・メタボローム解析を実施した。21例の小細胞肺癌血漿を用いて代謝解析・メタボローム解析を実施したところ、血漿からも、小細胞肺癌に特徴的な代謝産物が検出され、効果・副作用予測バイオマーカーとなり得ることが示唆された。なお、尿酸値とクレアチニン値に関して、血漿メタボローム解析で得られた代謝産物の絶対定量値と、同時に採取し測定した血清の生化学検査値との間に相関が認められたため、血漿を用いた代謝解析・メタボローム解析の忍容性を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施した血漿遊離DNAを用いた標的遺伝子解析の結果、予測された頻度(約60%)とほぼ同程度に、腫瘍組織で検出された体細胞遺伝子変異候補を血漿から検出することができたため、血漿遊離DNAを用いた標的遺伝子解析の忍容性を確認できた。加えて平成28年度内に、血漿を用いた代謝解析・メタボローム解析の忍容性を確認できたため、研究の進捗はおおむね順調である。しかし、臨床検体(血漿)の収集が少し遅れたため、一部は平成29年度以後に繰り越しとした。
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Strategy for Future Research Activity |
小細胞肺癌では、これまでに様々な分子標的治療薬の臨床試験が行われたが、バイオマーカーによる層別がうまくいかず、世界中で分子標的治療が成功していないのが現状である。小細胞肺癌においては、単一のゲノムバイオマーカーに基づいた精密医療には限界があると考えられ、新しい概念に基づいたバイオマーカーの創出が必要である。研究開始当初は、血漿遊離DNAを用いた診断法の開発やゲノムバイオマーカーの確立を目的としていたが、今後は、より表現型に近い代謝産物を用いたバイオマーカーの開発を中心に行うことにより、生物学的根拠に基づいた、画期的な治療効果予測・副作用予測バイオマーカーを確立し、難治性小細胞肺癌の診断・治療開発に貢献することを目標とする。
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Causes of Carryover |
臨床検体(血漿)の収集が少し遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究全体の進捗には大きな遅れはなく、平成29年度に行う解析に必要な試薬等の購入に用いる予定である。
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