2018 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグリポジショニングを活用した新規癌幹細胞標的治療法確立の試み
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16K07160
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岡田 雅司 山形大学, 医学部, 講師 (70512614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / ドラッグリポジショニング / 適応拡大 / JNK / xenograft / 腫瘍発生 / 幹細胞性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、c-Jun N-terminal kinase (JNK)シグナルが神経膠芽腫を始めとする様々ながん幹細胞の幹細胞性維持に必須の役割を果たすことを明らかにし、JNK阻害薬ががん幹細胞を標的とした優れた治療薬になり得ることを報告してきた。このような背景の中、申請者は、ドラッグリポジショニングの手法を用いて、ヒトにて安全情報をもつ別々に開発された二種類の薬剤、AS602801およびCEP1347がin vitroのみならずin vivoにおいても種々のがん幹細胞の幹細胞性を減少させることで抗腫瘍効果および生存期間延長効果が見られることを補助期間前半に報告してきた。そこでさらに、上記にて我々が見出したがん幹細胞治療薬であるAS602801およびCEP1347のヒトへの応用を目指し、現在臨床で用いられている抗がん剤と相乗効果を発揮する組み合わせを模索した結果、主に卵巣がん幹細胞において、両薬が主要な抗がん剤の効果を阻害すること無く相乗効果を発揮する薬剤として使用可能であることを明らかにし、各々国際誌に発表した。また、上記AS602801においてはある種の肺がん幹細胞のみではあるが脳転移に必須の役割を果たすという報告のあるコネキシン43の発現を抑制することから脳転移を抑制する可能性を見出したので、この成果も国際誌に発表し受理された。 以上より、ドラッグリポジショニングおよび適応拡大を用いた研究を今年度は4報を国際誌に発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時点で得られていた、パーキンソン病治療薬として開発されていたCEP1347を用いた予備的知見から、更に細胞種を増やして実験を追加することで予備的知見と合致する結果を得、さらに、ヌードマウスを用いた異所性および同所性移植モデルからCEP1347がin vivoにおいてもがん幹細胞を制御可能であり生存期間を延長可能であることを見出した。CEP1347はがん幹細胞を減じることが可能でさらに通常用いられている抗がん剤にて非がん幹細胞を減少させることでがんの根治を目指すことが可能になると考えられた。そこでCEP1347と現在臨床で用いられている殺細胞効果を有する抗がん剤と組み合わせ、その効果を上昇させるかどうかを調べたところ、卵巣がん幹細胞においてCEP1347は抗がん剤の感受性を上昇させることでがん幹細胞を更に死滅させることを見出し、国際誌に発表することができた。 以上の研究活動を総合的に判断すると、申請時点の計画以上に進行し結果を出すことができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
MLK-JNK経路阻害薬であるCEP1347が予定補助期間においてグリオーマ幹細胞を始めとする様々ながん幹細胞の幹細胞性を喪失させ、in vivoモデルにおいても腫瘍中のがん幹細胞数の減少を明らかにすることができた事、さらに、卵巣がん幹細胞を用いたモデルで、in vitroのみではあるが卵巣がん治療に用いられる抗がん剤とCEP1347の組み合わせ治療を行うことによって、卵巣がん幹細胞をより減少させることを見出したが、他の癌種および動物モデルでの組み合わせ効果およびその作用機序に関しては未だ不明な点が多い。まずはin vitroで効果が明らかとなった卵巣がん細胞を用いたin vivoのモデルを可能な限り遂行したい。また、いくつか予備的知見を得ている他の癌種を用いたモデルを用いてCEP1347の作用機序を明らかにしつつ、広範な治療薬としての可能性を試験したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画よりもよく進展してはいるが、今年度において明らかにしたがん幹細胞治療薬と抗がん剤との併用について、卵巣がん以外の他の癌種および動物モデルでの組み合わせ効果に関しては未だ不明である。またがん幹細胞治療薬の機序についても不明な点が未だ多く残されている。現在これらの不明点の解明のための実験を予定しており、かつ、CEP1347の作用機序について新たな知見が蓄積されつつ有る状況であるので、一部次年度に持ち越すことを決定した次第である。
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Research Products
(5 results)