2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌ゲノム転写制御における全シグマ因子の支配下全プロモーターの決定
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16K07195
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
島田 友裕 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10535230)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム転写制御 / RNAポリメラーゼ / シグマ因子 / Constitutive promoter / Inducible promoter / 大腸菌 / Genomic SELEX |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子発現の本質を理解するためには、RNAポリメラーゼホロ酵素が単独で認識できる[Constitutive promoter]と、認識に何らかの補助因子が必要な[Inducible promoter]を区別する必要がある。本研究は大腸菌をモデル生物として、Genomic SELEX法によって、大腸菌の全7種類のシグマ因子のConstitutive promoterの決定を目指して実施されている。 今年度はGenomic SELEXの実施に向けて、RNAポリメラーゼのコア酵素の精製、および、全7種類の各シグマ因子の精製を行った。また、精製したコア酵素にシグマ因子の混在がないことを、抗体を用いて確認した。 さらにそれら精製たんぱく質を用いて、各シグマ因子についてGenomic SELEX実験を実施した。SELEXを行い得られたDNA断片のパターンを電気泳動により確認したところ、いずれも異なるパターンを示しており、それぞれ特異的な配列が得られていることが示唆された。また、それまでに要したSELEXの反応数はシグマ因子毎に異なっており、各シグマ因子の標的プロモーターへの親和性の差が反映された結果と考えられた。得られたゲノムDNA断片はタイリングアレイを用いて解析し、ゲノム上の標的配列の網羅的な同定を試みた。その結果、FecIシグマ因子を除く6種類のシグマ因子、RpoD, RpoN, RpoS, RpoH, RpoF, RpoEについては、それぞれの既知の標的プロモーターを含むゲノム上の標的領域を同定する事に成功した。それぞれのシグマ因子について、数百ヵ所の標的領域が同定されており、現在はその詳細な解析を進めており、各シグマ因子のプロモーターリストの作成を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAポリメラーゼのコア酵素と全7種類のシグマ因子の精製に成功した。また、全7種類のシグマ因子について、それぞれホロ酵素を形成させてSELEX-chip解析を行い、各シグマ因子のゲノム上の結合領域の同定を行った。その結果、FecIシグマ因子を除く6種類のシグマ因子、RpoD, RpoN, RpoS, RpoH, RpoF, RpoEのそれぞれのホロ酵素について、既知の標的プロモーターを含むゲノム上の標的領域を網羅的に同定する事に成功した。現在はその標的領域の詳細な解析を進めている最中で、各シグマ因子において、既知の標的領域に加えて新規な標的が多数得られていることを確認している。そのため、研究が順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きSELEX-chipの実験結果の詳細な解析を進める。まずは、各シグマ因子のプロモーターリストを完成させる。さらに既知プロモーターと新規プロモーターを区別し、新たに同定される制御ネットワークの役割について考察していく。また、これまでのin vivo解析で同定されてきたプロモーターと今回新たに同定されたプロモーターを比較し、各シグマ因子についてConstitutive promoterとInducible promoterのリストを完成させる。 全7種類中6種類のシグマ因子のConstitutive promoterの網羅的な同定に成功する目途が立ってきた。そこで当初の予定に加え、全シグマ因子の細胞内濃度およびその変化の検証についても研究計画に組み込む予定である。各シグマ因子による遺伝子発現の活性は、細胞内に一定数存在するRNAポリメラーゼコア酵素に対する各シグマ因子の細胞内濃度の変化および親和性により決定される。そこで、実施している各シグマ因子の標的の同定に加え、各シグマ因子の細胞内濃度を同定することで、シグマ因子間で生ずるRNAポリメラーゼコア酵素に対する拮抗作用の検証を開始し、実際の細胞内で生じている動的なゲノム転写制御機構についても理解を深めていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)