2017 Fiscal Year Research-status Report
in vitroキナーゼ-基質間情報に基づく細胞内リン酸化ネットワーク解析
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16K07198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 直幸 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50545704)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテオミクス / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内のシグナル伝達を行う上でタンパク質の可逆的リン酸化は非常に重要な役割を果たしているが、その基質特異性やシグナル伝達における役割など十分な知見が得られていない。本研究では、細胞内におけるタンパク質間のリン酸化ネットワークの網羅的な解析 を目的とし、in vitro反応試験によって得られた基質情報から各キナーゼの基質モデルを構築し、キナーゼの生理条件下における基質の予測および検証を行う。 本年度の研究では、これまでに取得した、約350種のヒトキナーゼを用いたin vitro反応試験の結果に加えて、新たに50種類のヒトキナーゼ組換え体を用いたin vitroキナーゼ試験を行い、in vitro基質の同定を行った。また、前年度と同様にして各キナーゼの基質モデルを部位特異的配列マトリックス(position-specific sequence matrix, PSSM)により作成した。次に上述のPSSM、ヒト培養細胞のリン酸化プロテオーム解析によって取得した大規模なタンパク質リン酸化情報、およびタンパク質間相互作用情報を用いて、生理的条件下におけるキナーゼ-基質間情報を予測した。 予測したキナーゼ-基質間情報の妥当性を評価するために、キナーゼ特異的なactivatorや阻害剤処理を行った試料に対して、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、リン酸化量が変動したリン酸化部位と、予測基質情報との照合を行った。MAPKシグナル経路、ErbBパスウェイ下のキナーゼ群に関して、実験データとin silicoの予測情報の間に良い一致が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった、新たなキナーゼのin vitro基質情報の取得と基質予測は達成しており、研究計画は順調に進行していると考える。一方で、基質予測の評価として一部のキナーゼについては阻害剤刺激などによって評価を実施したものの、多くのキナーゼについては評価実験が着手できておらず、H30年度にて実施を行う。また、in vitro基質の情報量が少ないキナーゼについてはコンセンサス配列の取得ができず基質予測が行えていないという問題がある事から、それらのキナーゼについては、より高深度に解析が行えるように、前分画法と組み合わせた基質同定試験の実施を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って引き続き、予測したキナーゼ基質の妥当性を評価するために、阻害薬刺激やsiRNAで特定のキナーゼの活性や発現を抑制することによる予測基質のリン酸化の変動量を確認する。 基質予測がなされなかったキナーゼが存在する理由として、キナーゼ組換え体を用いたin vitro試験によって得られる基質情報が少なくコンセンサス配列の取得が出来ないものや、抽出した基質モデルの信頼性が低いといった理由が考えられる。解決策として、前分画や高深度測定法を併用して、より大規模なin vitro基質取得を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究の進捗は十分であったものの、一部着手できなかった実験(siRNAによる基質予測の評価)があったため。 (使用計画) 前年度、実施できなかった研究の消耗品(試薬、プラスチック機器等)の購入に充てる。
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Research Products
(6 results)