2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンH2A変異体による癌化とエピゲノム攪乱メカニズムの解析
Project/Area Number |
16K07201
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
相原 仁 九州大学, 生体防御医学研究所, 学術研究員 (80587717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロマチン / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチンの主要構成因子であるヒストンは、アセチル化、リン酸化、メチル化、ユビキチン化などの翻訳後修飾を受ける。これらの修飾は、クロマチン構造の維持・変換や、転写・DNA修復などのクロマチンの機能を調節する役割を担っており、ヒストンコード仮説が提唱されている。われわれは、ヒストンH2AのC末端部分の、120番目スレオニンのリン酸化(T120-H2A)および119番目リジン(K119-H2A)のユビキチン化が相互に拮抗していることを見出した。K119-H2Aはポリコーム複合体PRC1などのE3によってユビキチン化され、このユビキチン化はヒストンH3の4番目リジンのメチル化(転写活性化のヒストンコード)を阻害することによって、転写を負に制御する。一方、VRK1キナーゼによるT120-H2Aのリン酸化によって、K119-H2Aのユビキチン化が阻害され、結果的に転写の脱抑制が起きる、この転写の分子メカニズムによって制御される遺伝子をサイクリンD1を含め複数見出した。前年度はVRK1キナーゼ活性変異体およびT120-H2Aリン酸化部位のアミノ酸変異体を解析し、腫瘍形成能を見出した。今年度はK119-H2Aおよび、同じくユビキチン化される隣残基118番目リジンのアミノ酸変異体を作製し、ユビキチン化部位の腫瘍形成能を調べた。その結果、両リジン残基の変異とも腫瘍形成を示すことを明らかにした。以上のことから、ヒストンH2Aユビキチン化・リン酸化修飾の制御破綻が細胞の癌化を引き起こすことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒストンH2Aリン酸化変異体と同様に、ユビキチン化部位変異体でも腫瘍形成を促進することは示せたことで、一定の結果は得られた。次に、これらの変異体がどのようにして癌化を引き起こすか、その分子メカニズムを明らかにするため、癌細胞株でH2A変異体を発現する安定株を作製中であるが、分子メカニズムを明らかにする手がかりを得る段階には至らなかった。これらのことを総合して、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は以前に、マイクロアレイ解析より、VRK1標的遺伝子を明らかにしている。H2A変異体の安定発現株を用いて、これらの遺伝子発現の制御領域であるコアプロモーターやエンハンサー領域におけるヒストンH2Aのリン酸化やユビキチン化の状態への影響を調べる。また、他のヒストンH3のメチル化やアセチル化状態、VRK1やポリコーム複合体などのヒストン修飾酵素のクロマチンへの結合状態におよぼすヒストンH2A変異体の作用についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)実験準備段階で、経費の節減を行ったこと、当初の計画より実験が遅れており、予想される結果から考えられる次の実験のための試薬購入ができなかったためである。 (使用計画)未使用額は、最終年度の物品購入費および学会参加のための旅費に充てる予定である。
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