2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07235
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
逸見 泰久 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (40304985)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 資源管理 / ハマグリ / 干潟保全 / 優占種 / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩礁潮間帯では、ヒトデなどのキーストン種を除去するとイガイ類などが岩礁基盤を独占し、生物多様性が低下することが報告されている(Paine 1966など, Connell 1978の中規模攪乱仮説も参照)。同様のことが干潟ベントスについても言えるかどうかを検証するのが、本研究の目的である。調査地の加布里海岸(福岡県)は平成5年頃にハマグリが激減したが、その後の厳しい資源管理により、3kg/m2を超えるほどハマグリが増加し、優占種となっている。 特定の種が優占する干潟では、生物多様性は低下するのだろうか。干潟は、岩礁と違って、底生動物に3次元の生息場所を提供している。また、アサリやハマグリは干潟生態系を支える「基盤となる種」と考えられ、「アサリ・ハマグリの激減した干潟には、他のベントスも少ない」という指摘もある。 平成29年度は、ハマグリの密度(生物量)を操作して、群集構造の変化を見る操作実験を行った。まず、漁場に、高さ30cm(目合い 2cm x 2.5cm)のネットを張り、2m四方の囲いを作り、その中の殻長3cm以上のハマグリをすべて除去した。次に、ハマグリ除去区、中密度区、高密度区の3密度区(4区画ずつ)になるように、殻長5-6 cmのハマグリを入れた。その後、各囲いに50cm四方の方形区を毎月2ヵ所置き、1mm目の篩でふるって底生動物相(ハマグリを含む)の変化を追跡した。ただし、2cm以上の網目を通過できない生物は測定後、すぐに囲い内に戻し、それ以外の生物は標本とした。 実験の結果、ハマグリ成貝の過密は、底生動物の群集構造に大きな影響を与えないことがわかった。ただし、ハマグリの稚貝・幼貝は減少傾向、アサリの成貝は増加傾向、ウミニナは増加傾向、スイフガイ類は減少傾向にあり、種によって影響が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハマグリの成貝の過密が、底生動物の群集構造に大きく影響しないことは、ハマグリ成貝が急激に増加している加布里海岸における底生動物の群集構造の変化から予想できていたが、今回これが、実験的にも確認できた。また、平成29年度は、春と秋に加布里海岸でハマグリの生息状況調査、秋に底生動物の群集構造調査も行い(平成19年より継続)、ハマグリの分布・サイズ組成、底生動物の分布・種組成などが把握できた。
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Strategy for Future Research Activity |
加布里海岸では、2012年頃よりハマグリの稚貝が減少し、2016年以降、成貝も減少傾向にある。今後、3-4年の間にハマグリ成貝の現存量はピーク時の3分の1程度に減少すると予想されるので、それに伴う群集構造の変化を追跡する。 また、ハマグリの稚貝の減少や資源量減少に伴う資源管理の方向性についても、地元の糸島漁協と協力して、研究を進める。
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Research Products
(5 results)