2016 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム中部がツバキ属植物の新たな起源地か?その遺伝的多様性評価と保全
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16K07239
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
植松 千代美 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30232789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 寛則 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50294202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ツバキ属植物 / Camellia / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年4月から5月の第1回調査ではベトナム南部最西端のKien Giang省Phu Quoc島から中部のThua Thien-Hue省までの13省を探索した。第2回調査では2016年12月から2017年1月に中部のThua Thien-Hue省以北の北はBac Kan省、北東部のLang Son省、Quang Ninh省までの16省を探索した。2016年1月の中部Lam Dong省における予備調査も含む3回の探索で、50数種(同定できた40種と同定中の10数種)、577個体を見いだし、全個体について、GPSデータ、葉形態計測用のさく葉標本を作成しスキャンデータを得た。開花個体については花を採集し、形態形質を調査した。SSR解析にはシリカゲルで乾燥保存した葉からDNAを得た。民間のカメリアガーデンや国立公園の一角に作られた保存園などで栽培管理下にあるツバキ属植物約100個体からもSSR解析用の葉を採集した。 集団遺伝学的解析のため1集団あたり7個体以上の採集を目指し、同定中の7種7集団を含む38種47集団について十分な数の個体からサンプルを得られた。これまでにベトナム中部以南から得た35種のDNAを用いて、チャで開発されたSSRマーカー(Sharma et al., 2009, Tanicuchi et al., 2012, Tan et al., 2013)がツバキ属植物に適用可能か否かを調査した。96マーカーを選びスクリーニングしたところ23マーカーがツバキにも適用できることがわかった。 同定中のサンプルの中には新種が複数種含まれている可能性があり、3種について新種記載の論文を準備中である(1報は投稿済み)。なお開花を確認できなかった種については再度冬の開花期に探索調査を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備調査も含め3回の探索調査で50数種(同定済み40種、同定中10数種)、577個体を得ており、ベトナムのツバキの多様性を調べるために最低限必要な集団数、種数を採集できたと考える。ただし種によってDNA抽出の難易度が異なったため、全個体からのDNA抽出に予想以上の時間を要した。このためSSR解析のためのマーカー選抜も当初予定よりやや遅れたが、現時点では15連鎖群のうち14連鎖群をカバーするマーカーが得られており、解析は順調に進み始めている。 花の形態調査は1個体について10花を予定していたが、第1回調査ではすでに開花期を過ぎており、断念せざるを得なかった。第2回調査では開花が認められれば採集して調査したが、開花期とずれた場合には断念した。集団内でも全ての個体が開花している事は稀で、さらに1個体から10花を得ることも困難だった。このため花の形態調査は開花集団から最低1花は採集・調査し、その特徴を記述することとした。 葉形態については第2回の探索調査で作成したさく葉標本のスキャンも終了し、今後計測に取りかかる。 ベトナムのLam Dong省と大阪市大植物園で採集した枝から挿し木による増殖・保全を試みている。活着個体は今後の分析等に供試する。フローサイトメーターを用いた倍数性調査が遅れていたが、次年度以降はこれらの挿し木個体を用いて測定するとともに、乾燥標本を用いた測定方法を検討する。 以上の状況から、初年度、予想外に大量のサンプルを得て処理に手間取ったが、ほぼ順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
予備調査も含め3回の探索調査で同定中の10数種を含む50数種、577個体を得ており、また個人のカメリアガーデンや国立公園に設けられた保存園からも約100個体のサンプルをSSR解析用に採集できた。これらによりベトナムのツバキ属植物の多様性を調べるために最低限必要な種数、集団数、個体数をカバーできたと考える。今後は次の様に研究を進める。 (1)ベトナム南部のツバキ属植物については、予備調査ならびに第1回調査で網羅できており、これらについてSSRマーカーを用いた集団遺伝学的解析を先行して進める。葉の形態についても南部のサンプルについて解析する。この南部の解析結果を投稿論文としてまとめる。 (2)北部のサンプルについて同様に解析し、南部のデータを統合してベトナム全体のデータとして、集団遺伝学的解析に供する。なお南部の集団で花のデータを欠くものについては2017年冬に補足的な探索を行う。 (3)各種についてフローサイトメーターを用いた倍数性調査を進める。とくに乾燥標本を用いた測定方法を検討する。 (4)ベトナムの集団全体の解析結果ならびに各集団の生息地の状況から、保全の緊急度の高い集団(保全単位)を選定する。 (5)保全単位として選定された集団を中心に、穂木を採集し、危険分散も兼ねてベトナムと日本で挿し木による増殖・保全をはかる。以上の内容を投稿論文としてまとめる。
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Research Products
(1 results)