2016 Fiscal Year Research-status Report
卵形成から個体形成過程における翻訳の実態と役割の解明
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16K07242
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小谷 友也 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70419852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳 / mRNA局在 / RNA顆粒 / 分子複合体 / 卵形成 / 初期発生 / 脊椎動物 / 高次構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、卵形成と発生の進行に重要なmRNAの翻訳制御機構の解明を目的とする。特に、卵形成過程において明らかとなってきたRNA顆粒形成を介した制御機構の実態を見いだすこと、卵形成と受精後の翻訳制御機構における共通点と相違点を見いだすことを目指している。本年度は、卵母細胞に蓄積され、卵が成熟する過程(卵成熟)において翻訳されるcyclin B1とmos mRNAの制御機構について解析を行った。本研究によって、1) mos mRNAはcyclin B1 mRNAと同様にRNA顆粒を形成し、ゼブラフィッシュ卵母細胞の動物極細胞質に局在する、2) しかし、これらmRNAは異なる顆粒を形成する、3) さらに、その分布様式が異なることが明らかとなった。ショ糖密度勾配遠心法によってこれらRNA顆粒を分画した結果、4) いずれも非常に密度の高い画分に回収されるものの、mosと比較しcyclin B1のRNA顆粒はより高密度の画分に多く存在することが明らかとなった。以上の結果は、mosとcyclin B1が異なる巨大分子複合体を形成することを示唆する。さらに、RNA顆粒の変化を詳細に解析した結果、5) cyclin B1のRNA顆粒は卵核胞崩壊(GVBD)までの特定の時期に急激にその数を減少させるのに対し、mosのRNA顆粒はそれより早い時期に徐々にその数を減少させること、6) それぞれのmRNAのpoly(A)鎖の伸長が顆粒消失の時期と一致することが明らかとなった。また、7) cyclin B1のRNA顆粒消失はアクチン繊維の脱重合に依存するのに対し、mosのRNA顆粒は大部分がアクチン繊維に関係なく消失した。以上の結果から、RNA顆粒毎に異なる制御機構が存在し、これが卵形成過程における時期特異的な翻訳を実現すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では現在までに、翻訳時期が異なるmRNAがそれぞれに顆粒状構造を形成し、細胞質における異なる制御を受けることを見いだした。これらの発見は、翻訳制御機構の分野に全く新たな知見をもたらすもので、本研究の目的の1つであるRNA顆粒形成を介した制御機構の実態に大きく迫ることが出来たと評価する。さらに、これらの成果をすでに国際誌に発表しており(Horie and Kotani, 2016)、当初の計画より迅速に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、卵形成過程と発生過程における翻訳制御機構の共通点と相違点を見いだすことも目的とする。今後、受精後の卵割期に活発に翻訳されるpou2 mRNAの翻訳制御機構、および胚の背腹軸形成に重要なwnt8a mRNAの翻訳制御機構について、その翻訳時期の特定、生物学的意義、翻訳制御機構の解明を目指す。さらに、これらmRNAを蛍光蛋白質で標識し、mRNAの局在とその変化、および翻訳の活性化についてリアルタイムで捉えることを試みる。
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Causes of Carryover |
平成28年度において使用する試薬の一部に前年度からの在庫が存在し、新たな購入に遅れがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究実施に必要な試薬を購入する。
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