2016 Fiscal Year Research-status Report
小分子RNAをガイド鎖とするDNAサイレンシング機構の解明
Project/Area Number |
16K07246
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三好 智博 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (60534550)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20502397)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Argonaute / RNA / DNA / サイレンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA干渉(RNA interference)は、小分子RNAをガイド鎖として、その塩基配列特異的にターゲットRNAを分解する生体内メカニズムである。このRNA干渉は、真核細胞に特有の機構であり、Argonauteタンパク質がその作用機序の中枢を担っている。一方、原核生物にもArgonauteは存在するが、その機能は未解明のままであった。近年申請者らは、X線結晶構造解析と生化学的解析により、光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesのArgonaute(RsAgo)が、小分子RNAをガイド鎖として、その塩基配列依存的にDNAと結合することによってDNA interferenceを誘導することを明らかにした。しかしながら、このシステムの詳細は、ほとんど明らかにされていない。本研究の目的は、このRsAgoによるRNA-guided DNA interferenceの分子メカニズムを解明することである。 平成28年度の研究計画では、ガイド鎖小分子RNAの生合成機構の解明を行った。我々が明らかにしたRsAgo複合体の構造解析では、ガイド鎖の5’末端のウラシル塩基を特異的に認識する機構が備わっていることを示唆する結果が得られていた。この構造から得られた機能的な特徴を生化学的に解明するために、蛍光標識をしたRNAを用いて蛍光偏向度測定を行った。その結果RsAgoが、他の塩基(アデニン、シトシン、グアニン)より明確に強いウラシル塩基の結合特異性を持つことが明確になった。このことから、RsAgoタンパク質が核酸5’末端塩基の結合特異性を有し、ガイド鎖の選択性に寄与していることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本実験は、原核生物に備わるRNA-guided DNA interference機構のメカニズムを明らかにすることである。 RsAgoに結合するガイドRNA鎖(約18塩基長)は、RNA-guided DNA interferenceシステムのトリガーとなる重要な核酸分子であるが、その生合成経路に関する知見は皆無である。しかし、我々の構造解析の結果から、RsAgoには、ガイド鎖の5’末端のウラシル塩基を特異的に認識する機構が備わっていることを示唆する結果が得られた。さらに、ゲルシフト法により、40塩基長の長鎖RNAも成熟型RNAと考えられる18塩基長RNAと同様の結合力でRsAgoに結合することを明らかにした。これらの結果から、RsAgoに結合する小分子RNAの前駆体が、5’末端がウラシルである長い1本鎖RNAである可能性が考えられている。H28年度の実験計画として、下記の(a)~(c)の実験により、この小分子RNAプロセシングモデルの正当性の検証を進めている。 (a)ガイド鎖5’末端塩基の特異性、(b)長鎖RNAのプロセシング過程、(c)小分子RNA成熟化因子の同定 (a)に関しては、研究実績の概要でも記述したように、構造学的に示唆されていたRsAgoの機能を生化学的解析により、明確することができた。一方、(b)と(c)に関しては、現在のところ実験の準備段階であり、長鎖RNAのプロセシング過程や小分子RNA成熟化因子の同定に至っていない。 以上のことから、申請段階における研究進捗予定より若干遅れているので、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実験計画として達成できていないものが、長鎖RNAのプロセシング過程の解明と、小分子RNA成熟化因子の同定の2つの研究である。これらの研究には、光合成細菌自体を用いて行う実験であり、光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesを用いた実験系の確立が必要不可欠である。必要に応じて、遺伝子改変型光合成細菌(タグ付きRsAgo発現系)を作成して、実験を進める予定である。 平成29年度の前半は、上記に記述した平成28年度の残りの実験を行い、完了後平成29年度以降の研究計画である「RsAgoの構造的特徴と機能との関連性」及び「DNAサイレンシングの分子メカニズムの解明」に関して進めていきたいと考えている。RsAgoの構造的特徴と機能の関連性に関しては、すでに大腸菌を用いたDNAプラスミドの量を定量することによってRsAgoの機能解析が可能な実験系を確立しており、この実験手法を用いて機能の評価を行う予定である。 本研究の最終的な目標である「DNAサイレンシングの分子メカニズムの全貌解明」に関しては、RsAgoと細胞内で複合体を形成するタンパク質の探索を行い、同時にin vitroでRNAポリメラーゼによるRNA合成系やDNAポリメラーゼによるDNA複製反応系を作成し、そこにRsAgo-ガイドRNA複合体を加えることで、各種反応系への影響を検証していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究の大まかな研究手順は、(a)ガイド鎖5’末端塩基の特異性、(b)長鎖RNAのプロセシング過程、(c)小分子RNA成熟化因子の同定に関する研究を予定していた。 平成28年度の研究では、主に上記の実験計画(a)ガイド鎖5’末端塩基の特異性に関するデータを得ることができた。しかしながら、(b)長鎖RNAのプロセシング過程、(c)小分子RNA成熟化因子の同定に関する研究は、予定通り進んでいない。このため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に行う予定であった上記の長鎖RNAのプロセシング過程、小分子RNA成熟化因子の同定に関する研究を行うために、生じた次年度使用額は使用する予定である。 平成28年度の研究が完了次第、平成29年度の研究計画である「RsAgoの構造的特徴と機能との関連性」及び「DNAサイレンシングの分子メカニズムの解明」に関して研究を進めていきたいと考えている。
|