2016 Fiscal Year Research-status Report
転写にともなう条件的ヘテロクロマチン形成機構のダイナミクスの解明
Project/Area Number |
16K07249
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
大畑 樹也 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80616459)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / X染色体不活性化 / 非コードRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
転写はクロマチンと呼ばれるヌクレオソーム、タンパク質、RNAが結合した分子複合体の動的な変動を介して制御されている。しかしながら、未だそれを制御する機構に関する知見は乏しい。ほ乳類のメスでは、オスとのX連鎖遺伝子発現量を等量に補正する為に、一本が不活性化される。このX染色体不活性化は機能的長鎖ノンコーディングRNAであるXistが引きおこす。Xist全体を覆う形で逆向きに転写しているアンチセンスRNAであるTsixは、Xistの発現を負に調節する。その際、TsixによってXistプロモーター上には条件的へテロクロマチンが形成される。この様な、発生段階や細胞分化の転写制御機構である条件的ヘテロクロマチンの動的な構造変化に関して、それを制御する因子や機構に関する知見は乏しい。 本提案では、独自のTsix発現誘導系を用いて、Xist遺伝子座における動的な条件的ヘテロクロマチン形成機構のダイナミクスを解明する。本研究成果は、X染色体不活性化の制御機構に留まらず、より一般的な条件的ヘテロクロマチン形成機構の理解に大きく貢献する。 本研究の目的のために独自に開発した実験系であるエピブラスト幹細胞は、ドキシサイクリン添加によるTsixの転写誘導に伴い、Xist プロモーター領域に条件的ヘテロクロマチンが形成される。昨年度は、この独自の実験系を用いて、ユークロマチンから条件的ヘテロクロマチン形成に至るまでの動的な構造変化について解析を行った。結果、未報告な変化を多く含む、ヒストン修飾変化、ヒストンバリアント変化、DNAメチル化変化、ヌクレオソームの配置変化、クロマチンループ形成因子局在変化、クロマチン構造変化などが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、現在までの解析により、Tsixの転写誘導に伴うXistプロモーター領域のユークロマチンから条件的ヘテロクロマチン形成に至るまでの動的な構造変化が明らかになった。それらは、未報告なものも多く含む、ヒストン修飾変化、ヒストンバリアント変化、DNAメチル化変化、ヌクレオソームの配置変化、クロマチンループ形成因子局在変化、クロマチン構造変化などである。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果を元に、今後はそれらエピジェネティック修飾の階層性および機能について詳細な解析を行う。階層性については、変化に至るまでの時間を細かく解析する事で(継時的解析)、エピジェネティック修飾群が起こるまでの順序を決定する。また、変化を示したエピジェネティック修飾の責任遺伝子候補(ヒストン修飾酵素、DNAメチル化酵素など)をノックダウンし、責任遺伝子を同定する。責任遺伝子をノックダウンし、上流・下流のエピジェネティック修飾に影響がでるか解析する。また、責任遺伝子をノックダウンし、TsixによるXistの抑制が解除されるかも検討する。これらを統合し、Tsixの転写を起点とした条件的ヘテロクロマチン形成のダイナミクス、階層性、及び機能を解明する。
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Causes of Carryover |
初年度行う予定であったChIPの実験に用いる抗体およびqPCR用の試薬を一部しか購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、前年度の繰越分を、昨年度完了させる予定であった上記実験分の抗体および試薬購入にあてる予定である。
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Research Products
(7 results)