2017 Fiscal Year Research-status Report
DNAからのPCNAクリアランス機構の多様性の解析
Project/Area Number |
16K07257
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
塩見 泰史 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (80380567)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PCNA / RFC複合体 / PCNAローディング / PCNAアンローディング / PCNAクリアランス / 染色体 / ゲノム維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
複製を中心としたゲノムの維持伝達では、PCNAがRFC複合体の1つRFC1-RFCによりDNAにロードされて様々な因子集合の足場となり、その反応の促進に機能する。一方、役割を終えたPCNAは別のRFC複合体であるElg1-RFCによりDNAからアンロードされる。これまでに、RNAiで細胞内Elg1量を低下させるとS期進行の遅延や染色体構造異常が起こることから、PCNAアンロードの重要性を示してきた。これらの解析過程では、Elg1のRNAi細胞でもG2/M期への進行時にはPCNAはクロマチンから除去されることを見出し、これはElg1-RFCが唯一のPCNA除去因子ではないことを示していた。 そこで本年度は、G2/M期で機能する新規PCNA除去因子の解析を目指した。この解析は、前年度に作成したAID法によるコンディショナル変異細胞株も用いて効率よく進めることができた。Elg1の細胞内量を低下させると同時にRFC1、もう一つのRFC複合体Ctf18のRNAiを行ない、クロマチン結合PCNA量の比較からElg1-RFC 非依存的なPCNA除去を検討した。その結果、RFC1、Ctf18またはそれらを同時にRNAiしても非同調細胞ではクロマチン結合PCNA量の変化は見られなかった。これは、S期ではElg1-RFCが主のアンローダーとして機能していることを示す。一方、G2/M期同調を行うとRFC1、Ctf18それぞれもアンロード能を示す可能性が見られたが、やはり多くのPCNAはクロマチンから除去されていた。これは、RFC複合体以外の新規因子によるPCNA除去を強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画通り、G2/M期におけるElg1-RFC以外のPCNA除去因子の探索を行い、RFC複合体以外の新規因子の存在を強く示唆する結果を得た。ただ現段階では、その因子の同定には至っていない。しかし、細胞に備わるクロマチンからのPCNA除去機構が複数存在する可能性は非常に興味深く、まず第一に新規因子の同定を行うためPCNA修飾や、他のPCNA結合因子によるPCNA除去の可能性を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の研究推進方策に従い、Elg1-AID細胞も利用してG2/M期でのDNAからのPCNAクリアランスの解析を進めていくことができた。今後は新規因子の同定が第一目標で、因子が同定された場合は細胞内におけるPCNAとの時空間的な相互作用を解析し、さらに新規因子の染色体や細胞恒常性への寄与を明らかにしていきたいと考えている。 細胞にクロマチンからのPCNA除去因子が複数存在する可能性は非常に興味深く、今後の解析でDNAからのPCNAクリアランス機構の多様性の意義を見出したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定していた経費の一部を、研究分担者となっている研究費や大学から支給された費用で充当したため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)研究の進展に合わせ、本年度の剰余額を利用して研究の実行に取り組む。追加の研究を計画しているので、その遂行に必要な物品(抗体や研究試薬など)を拡充し、これまでの知見をさらに深めることを目指す。
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Research Products
(9 results)