2017 Fiscal Year Research-status Report
DNA相同組換えタンパク質Rad52の非相同末端結合での働き
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16K07258
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
新井 直人 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70297795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DNA末端結合 / Rad52 / 非相同末端結合 / 相同組換え / Rad51 / DNA二本鎖切断修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母(S. cerevisiae)のRad52は、DNAリガーゼによる直鎖状DNA末端の結合を促進し、直鎖状DNAが連結した多量体を形成する。この活性が非相同末端結合に関与していると考えて解析を進めている。平成29年度は以下の2点に焦点を当てた。(1)Rad51とRad52による直鎖状DNA多量体の形成の活性に関連性はあるのか。(2)出芽酵母内での非相同末端結合に、Rad52のリガーゼ活性促進と直鎖状DNA多量体形成が直接的に機能しているのか。 Rad51は、Rad52と同様にDNAリガーゼによる直鎖状DNA末端の連結を促進し、直鎖状DNAの多量体を形成する。Rad52による反応は、MgのみでDNA末端連結の促進、直鎖状DNA多量体を示すが、Rad51ではPEG、Mg、Ca、ADPが必要である。Rad51とRad52は複合体を形成するため活性のさらなる促進を期待し、様々な反応条件を検討した。しかしDNA末端連結の促進効果において、両蛋白質の存在下で活性はむしろ低下し、互いに活性を打ち消し合っているようであり、異なる反応機構によると考えられる。Rad51-Rad52 複合体としてDNA末端連結を促進する条件がまだ見つかっていない可能性も残っているが、細胞内での相同組換えではRad52単独で働く経路があり、DNA末端連結でも単独で機能しているのかもしれない。 Rad52の非相同末端結合への関与には、酵母細胞内での解析が必要である。そのためにURA3、LEU2遺伝子をもつプラスミドDNAのURA3内の一箇所で切断した直鎖状DNAを酵母に導入して、環状になる効率を野生型株とrad52欠失または変異株で観察する系の構築を行った。まずプラスミドとゲノムのURA3間で相同組換えが生じないように、ゲノム上のURA3領域を全て除去した(HIS3に置換)株を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出芽酵母のRad52による非相同末端結合への関与について、平成29年度は以下の2点について解析を進めた。(1)Rad51とRad52による直鎖状DNA多量体の形成の活性に関連性はあるのか。(2)出芽酵母内での非相同末端結合に、Rad52のリガーゼ活性促進と直鎖状DNA多量体形成が直接的に機能しているのか。 (1)Rad51は、DNAリガーゼによる直鎖状DNA末端の連結を促進し、直鎖状DNAの多量体を形成する。この点においてはRad52と同様であるが、Rad52はMgのみでDNA末端連結の促進、直鎖状DNA多量体を示すのに対し、Rad51では、PEG、Mg、Ca、ADPが必要である。Rad51とRad52は複合体を形成するため、Rad51の反応を中心に条件を変えながら両蛋白質によるDNA末端連結の促進効果を解析したが、両蛋白質の存在により、Rad51またはRad52単独の活性より低下し、両蛋白質が互いに活性を打ち消し合っているようであった。そこで、試験管内でのRad52とRad51の共存下でのDNA末端連結の解析はここで停止し、Rad52単独で非相同末端結合に働いている可能性を細胞内で解析する実験へと移行した。 (2)非相同末端結合へのRad52の関与を酵母細胞内での解析を進めるためにゲノム遺伝子を改変した菌株を作成した。直鎖状DNAの連結を解析するためのプラスミドDNA上のURA3を利用するため、まず、プラスミドとゲノム上のURA3の間で相同組換えが生じないように、プラスミドDNA上のURA3遺伝子とその上下流の相同性のある領域をゲノム上から全て除去しHIS3に置換した株を作成した。さらに、その株のゲノム上のRAD52をTRP1で置換したrad52破壊株の作成が進行中であり、この完成により解析の準備が整う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「出芽酵母内での非相同末端結合に、Rad52のリガーゼ活性促進と直鎖状DNA多量体形成が直接的に機能しているのか」の点について推進する。すでに非相同末端結合を解析するためにゲノム上のURA3をHIS3に置換し、さらにrad52をTRP1に置換した菌株の作成が進行中である。この株(ura3::HIS3、rad52::TRP1、leu2)に、直鎖状プラスミドDNAを導入して環状になる効率を非相同末端結合として測定する。その際、導入するプラスミドDNAはLEU2とURA3を持ち、URA3内の一箇所を制限酵素で切断して直鎖状とする。一方、導入する菌株のゲノムにはプラスミドDNA上のURA3の相同領域を全て除去されているため、導入した直鎖状プラスミドDNAにRad52が結合しても相同領域がないために相同組換えへと進行できずに、非相同末端結合に移行するのではないかと期待している。導入された直鎖状プラスミドのDNA末端が正常に結合されれば菌体がウラシル非要求性となる。しかし、直鎖状プラスミドのDNA末端が削られる等の修飾を受けてから結合した時はウラシル要求性のままであるが、5フルオロオロチン酸(5FOA)耐性となる(5FOA耐性、ロイシン非要求性)。そして、rad52欠失株と野生型株でDNA末端結合の効率、さらには末端の修飾の有無も観察する。さらに、rad52をURA3で置換した株(ura3::HIS3、rad52::URA3、leu2)を作成した(5FOA感受性)後、rad52領域のURA3をrad52変異体に置換(5FOA耐性)することにより、試験管内でDNA末端の連結促進活性のないrad52変異の非相同末端結合への影響を観察する。このようにしてRad52による試験管内での直鎖状DNA末端連結の促進と細胞内での非相同末端結合との関連を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(3 results)