2017 Fiscal Year Research-status Report
酸化損傷mRNAによる遺伝子発現異常を抑制する機構の解明
Project/Area Number |
16K07260
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
石井 健士 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (70516731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 猛 九州大学, 医学研究院, 助教 (60187846)
早川 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (70150422)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化損傷 / 8-oxoG / mRNA / mRNA分解 / 酸化RNA / AUF1 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が酸化ストレスを受けると、細胞内を構成する様々な生体分子が酸化を受け、その機能に異常を生じる。特に、遺伝情報の伝達に働くmRNAの酸化損傷は、異常タンパク質の合成を引き起こし、細胞の恒常性喪失を誘導する。この危機に対処するために、細胞は酸化RNAを排除する、何らかの生体防御機構を有していると考えられる。我々は、その様な分子機構を明らかにするために、酸化RNAと結合するタンパク質の機能解析を行っている。 これまでの研究から、酸化損傷を受けたRNAと相互作用する因子としてタンパク質AUF1を分離・同定している。AUF1は酸化処理を行ったRNA分子に結合するだけでなく、人工的に合成した8-oxoGを含むoligo RNA鎖とも結合することを確認している。このことは、AUF1がRNA上に生じた酸化損傷、特に損傷塩基8-oxoGを特異的に認識し、これに結合する能力を有していることを示していると考えられる。また、細胞を用いた実験として、AUF1の遺伝子ノックアウト細胞を樹立し、その細胞内での機能を調べた。その結果、AUF1ノックアウト細胞では酸化ストレス下で誘導されるmRNA分解が抑制されることが明らかとなった。このことから、AUF1が酸化損傷を受けたmRNAを分解する経路において機能していると考え研究を進めている。 特に、今年度はAUF1と共に8-oxoGを含むoligo RNAと結合する新規因子の分離と同定を行った。それらの因子はAUF1と同じく8-oxoG RANへの特異的な結合性を示したが、その結合様式はAUF1と異なっていた。このことから、新規因子はAUF1とは異なる分子機構を通して酸化損傷RNAの排除を行っていると予想している。この因子を基に、新たな分子機構を発見する可能性があり、本研究の重要性が増してきたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞が酸化ストレスを受け、mRNAが酸化損傷を受けると、遺伝情報の誤伝達が引き起こされ細胞の恒常性喪失が誘導される。この危機に対処するために、細胞は酸化損傷RNAを細胞から排除する生体防御機構を有していると考えられる。その様な機構は、細胞を酸化ストレスから守り、生体の老化、また疾患の発病を抑制するために必須であると考えられる。そこで、本研究ではその様な分子機構を明らかにするために酸化RNAタンパク質の機能解析を行っている。 これまでの研究において、AUF1を含め複数の酸化損傷RNA結合因子の分離を行ってきた。特に、AUF1については、その結合特異性を明らかにし、遺伝子ノックアウトによって酸化ストレス誘導のmRNA分解が抑制されることを明らかにしている。それらの結果、タンパク質AUF1が酸化損傷を受けたmRNAの排除に働くことを示していると考えている。 この考えに従い、酸化損傷RNAの分解に関わる、さらなる因子の分離と同定を試みた。そのために、人工的に合成した8-oxoGを含むRNA鎖を用い、AUF1と共に8-oxoGを特異的に認識し、結合する新規因子の分離を行った。その結果、AUF1と共に新規酸化RNA結合因子が複数分離された。これらの因子について、マス解析による同定を行ったところ、既知のRNA結合因子であった。そこで、これらの因子の機能解析を行った結果、これらの因子がAUF1とは違った8-oxoG RNA結合様式を持つこと、またAUF1よりも強く8-oxoG RNAに結合することが明らかとなった。このことから、新たに同定された因子はAUF1とは異なる機構を通して酸化損傷RNAの排除に関わっているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、AUF1と共に複数の酸化損傷RNA結合因子が分離された。これらの因子をマス解析によって同定した所、既知のRNA結合因子であったが、8-oxoG RNAとの結合性については未だ報告は無かった。よって、先ず初めに、酸化RNA結合因子としての結合性について詳しく解析を行っていく予定である。具体的には、プローブとして用いている8-oxoG RNA鎖上の8-oxoGの数や位置が結合性に与える影響や、8-oxoG RNAだけでなく8-oxoG DNAとも結合性を有するかなどについて解析を行っていく予定である。これらの結合性を明らかにできれば、各因子が酸化ストレスを受けた細胞内で、どの様な機能を有しているかを予測することができると考えている。そして、これらの予測を基に新規因子の分子的な機能を解明していく予定である。また、これらの実験については、これまでの経験から問題なく遂行できると考えている。 さらに、各因子の細胞内での機能を明らかにするために実験も計画している。そのために、上の実験結果から予測された分子機能を調べるため、HeLa S3株からの遺伝子ノックアウト株を樹立する。遺伝子ノックアウト株の作製については、遺伝子エディティング技術を利用する予定である。具体的には、CRISPR/Cas9 systemを用いて標的となるゲノムDNA上にDNAの二重鎖切断を引き起こさせ、不完全な修復が行われる分子機構を利用して遺伝子の破壊を行う。この実験系についても熟達した技術を有しているので、問題なく研究を遂行できると考えている。 以上の大きく2つの実験の結果を合わせることで、新規酸化RNA排除機構の存在を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
AUF1と共に酸化損傷RNAに結合する新規酸化RNA結合因子の分離において、予想よりも早く実験が成功したため、分離の材料に用いる予定であった培養細胞の準備が少量ですんだ。そのため、細胞の培養に用いる試薬の量が予想よりも少なくて済んだために、経費に余裕が生じた。 このことは、研究が順調に進んでいることを示していると考えられる。
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Research Products
(1 results)