2017 Fiscal Year Research-status Report
基本転写因子TFIIEを中心とした転写調節機構の解明
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16K07265
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
帯田 孝之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (30578696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 基本転写因子 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子の発現や制御は、細胞の分化や恒常性の維持など生命現象の根幹をなす重要なステップであり、その転写制御にRNAポリメラーゼや多くの転写調節因子が関わっている。その中で基本転写因子TFIIEは、TFIIF等と共同し、さらにTFIIHを誘導することで、RNAポリメラーゼIIを中心とした転写開始複合体の形成に必須の役割を果たしている。本研究では、TFIIEを軸とした基本転写因子群の相互作用ネットワークを、構造生物学的手法やITC等の物理化学的手法を用いて明らかにすることで、主にRNAポリメラーゼIIが関与する転写制御メカニズムを明瞭に説明することを目的としている。申請者らはこれまでに、ヒト基本転写因子群とその古細菌(Sulfolobus属)のオルソログについて数十を超える発現系の作成、およびタンパク質の精製を行った。続いてBiacoreやITCを用いた相互作用解析を行い、ヒトTFIIEサブユニット間において解離定数約0.2 microMの結合力で結合することを明らかにした。様々な長さのタンパク質を用いて相互作用解析することで、それぞれのサブユニットの結合境界を同定することに成功した。さらに、ヒトTFIIE複合体の結晶化を行い、放射光施設SPring8で良好な反射データ(約2オングストローム)を得ることに成功した。得られたデータを用いてSAD法によって位相を決定し、精密化を行うことでTFIIE複合体の結晶構造を決定した。また、古細菌TFE(ヒトTFIIEのオルソログ)の結晶化を行い、約2オングストロームの分解能で構造決定に成功した。また、DNAゲルシフトアッセイを行い、ヒトTFIIE複合体と二本鎖DNAとの相互作用を解析した。その結果、ヒトTFIIEのアルファとベータの両サブユニットが複合体を形成することによって、DNAとの相互作用が強くなることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らはこれまでに、ヒト基本転写因子群とその古細菌(Sulfolobus属)のオルソログについて数十を超える発現系の作成、およびタンパク質の精製を行った。続いてBiacoreやITCを用いた相互作用解析を行い、ヒトTFIIEサブユニット間において解離定数約0.2 microMの結合力で結合することを明らかにした。さらに、ヒトTFIIE複合体の結晶化を行い、放射光施設SPring8で良好な反射データ(約2オングストローム)を得ることに成功した。得られたデータを用いてSAD法によって位相を決定し、精密化を行うことでTFIIE複合体の結晶構造を決定した。続いて、古細菌TFEの結晶構造を、約2オングストロームの分解能で決定した。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは、DNAとTFIIEの相互作用に焦点を絞って解析を行う予定である。まず、ヒトTFIIEの 変異体を作成し、DNAとの相互作用に重要なアミノ酸を同定する。これまでの予備的な実験では、ベータサブユニットにDNAとの結合に重要な領域がみられており、ITCやBiacoreを用いてより詳細に定量的に解析を行う予定である。また、DNAとヒトTFIIEとの複合体や、古細菌TFEとの複合体の結晶化を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、物品費の予算に対して4万円強の残高が生じた。これは、結晶化試薬の使用量が想定よりも少なかった為である。また、旅費、人件費・謝金の項目でも、それぞれ4万円程度の残高が生じたが、学生の学会参加の人数が想定より一人少なかったことと、放射光施設での実験に対しての謝金が想定より少なかった為である。 平成30年度への126,782円の繰り越しは、全て物品費としての使用を計画している。具体的には、表面プラズモン共鳴実験が多く予定されているため、その試薬代に使用する予定である。
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