2016 Fiscal Year Research-status Report
発がんに寄与する非受容体型チロシンキナーゼFerの活性化メカニズムの構造基盤
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16K07268
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松浦 能行 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10402413)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ / X線結晶解析 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの増殖には、基質タンパク質のチロシンをリン酸化するチロシンキナーゼが深く関わっている。一般にチロシンキナーゼは、細胞の増殖・分化、細胞運動、免疫応答など、多様な生理機能を制御する複雑なシグナル伝達系の鍵を握る酵素であり、この酵素には多くの種類がある。ヒトでは90種類のチロシンキナーゼが同定されており、そのうち細胞の表面にあって外からの増殖シグナルを受け取って細胞内に伝える役割を果たす受容体型チロシンキナーゼが58種類、細胞の中で増殖シグナルを伝達する非受容体型チロシンキナーゼが32種類ある。 チロシンキナーゼの活性は、相互作用する分子群によって精緻に制御されている。遺伝子変異などにより活性制御機構が破綻してチロシンキナーゼが恒常的に活性化された状態に陥ると、がんが発生する(正常細胞が形質転換しがん細胞へと変化する)。また、チロシンキナーゼ活性の異常な亢進は、がんの悪性化(がん細胞の浸潤や転移)にも深く関わる。 Ferは、細胞の増殖や生存、細胞骨格、細胞接着を制御する機能をもつ非受容体型チロシンキナーゼである。Ferは、がん原遺伝子産物Srcを介したシグナル伝達経路の下流因子であり、Srcによって活性化され発がんに寄与する。本研究は、Ferの活性化に寄与するFerの多量体形成機構の構造基盤を解き明かすことを主な目的としている。今年度はFerの多量体化に寄与するドメインの発現系を立ち上げ、結晶化に取り組んだ。既にいくつかの生物種のコンストラクトで結晶化に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発現系の立ち上げ、結晶化ともに、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、結晶化条件を最適化し、良質の単結晶を育て、結晶構造を解く。
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Causes of Carryover |
当初想定したほど、物品などの購入に費用がかからなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬・消耗品、旅費などに必要な額を使用する。
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