2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒトRNAポリメラーゼIIと基本転写因子TFIIHのNMR法による複合体構造解明
Project/Area Number |
16K07277
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
奥田 昌彦 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任准教授 (60448686)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | タンパク複合体 / NMR / 基本転写因子 / RNAポリメラーゼII |
Outline of Annual Research Achievements |
基本転写因子TFIIHは、10個の異なるタンパク(サブユニット)からなる高分子量複合体である。転写の他に、DNA修復や細胞周期にも働く多機能タンパクである。TFIIHのサブユニットp62は、アミノ末端にプレクストリン相同(PH)ドメインをもつ。このドメインは、タンパク-タンパク間相互作用を通じてTFIIH複合体を必要な場所へリクルー トする役割を担っていることが分かってきた。我々はこれまでに、PHドメインとその結合パートナーである、基本転写因子TFIIEα、腫瘍抑制因子p53、DNA修復因子XPCとの複合体を、核磁気共鳴(NMR)法で解析し、それらの立体構造を決定してきた。3つの複合体構造から、結合パートナータンパクは、共通した構造原理に基づいてPHドメインを、認識、結合しているという重要な知見を得た。そこで、この構造原理を利用して新たな結合パートナーを探索したところ、RNAポリメラーゼIIのサブユニット(ここではPol II-subと表記)を見出した。実際に、Pol II-subはPHドメインと特異的に結合することを実験で確認した。 本研究では、両者の複合体の立体構造をNMR法で決定し、認識機構を明らかにすることを目的とした。昨年度決定した複合体構造から、PHドメインとの結合に重要な Pol II-sub のアミノ酸残基を同定し、それらをアラニンに置換した、合計7つの変異体を調製した。等温滴定型カロリメトリー( ITC)を用いて結合能を評価し、構造の妥当性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Pol II-subは大腸菌発現系から調整しているが、この系で7つの変異体を得るには多くの時間が費やされることが予想された。幸いなことに、結合領域は、連続した配列内にあり、分子全体でなくてもその領域だけで結合することが、構造解析から示唆された。そこで、Pol II-subと、化学合成ペプチドとして調整した結合領域フラグメントの結合能をITCで調べたところ、同程度であった。よって、変異体は化学合成ペプチドで調整した。これにより、計画が大幅に短縮された。
|
Strategy for Future Research Activity |
利用可能なPol IIの立体構造と、今回決定したPol II-subとp62 PHドメインの複合体構造から、Pol IIとPHドメインの複合体構造をモデル構築する。
|
Causes of Carryover |
計画通りに研究を進めることができた。現在、成果を論文にまとめ国際雑誌への投稿を準備している。そのための追加実験の実施、論文校正料、投稿料、印刷料等に使用する。
|