2016 Fiscal Year Research-status Report
中性子結晶構造解析によるヒドロゲナーゼの水素合成・分解機構の全容解明
Project/Area Number |
16K07283
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
玉田 太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50391248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 和男 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50354890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質 / 立体構造 / X線・中性子 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒドロゲナーゼは水素の合成・分解を両方向に触媒する酵素であり、その特徴的な機能に基づいた化石燃料に代わるクリーンエネルギーの創製が期待されている。ヒドロゲナーゼの反応機構を真に理解するためには、反応中の各状態の水素原子を直接観測することが必須であるため、本申請研究では中性子を中核に据え、X線を相補的に組み合わせた構造解析から全原子構造情報を高精度に取得することを目的としている。 平成28年度は、過年度に取得した酸化型(不活性状態:Ni-B型)の中性子結晶構造解析を同一結晶から取得したX線回折データを組み合わせた構造精密化により進めた。反応中心の貴金属原子が一部欠落していたが、占有率を同定した後に水素原子を含む反応中心近傍の構造決定をほぼ終了した。また、還元型(活性状態:Ni-R型)の大型結晶作製を2通りの方法(好気環境で大型結晶を作製した後に水素還元する方法と、試料調製から結晶作製までの全行程を嫌気環境で行う方法)で進めた。両結晶を用いてJ-PARCにおいて中性子回折実験を複数回実施した。その結果、前者の方法で作製した結晶から3Å分解能を超える回折点を確認することに成功した。後者については、まだ結晶のサイズが不十分なため最高でも3.5Å分解能程度の回折点の確認に留まった。なお、いずれの方法で作製した結晶においても、試料凍結の際に結晶の質が低下したことによる反射の乱れが確認されたため、回折データ収集には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元型(活性状態:Ni-R型)の大型結晶作製に成功し、3Å分解能を超える中性子回折点も確認済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
還元型(活性状態:Ni-R型)の大型結晶の凍結条件を確立し、2Å分解能程度の中性子回折データを収集する。その後、同一結晶から取得した高分解能X線回折データを組み合わせた構造精密化を実施する。
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Causes of Carryover |
当初予定した米国のパルス中性子源での回折実験が先方の装置の不具合のため順延となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国のパルス中性子源での実験のための旅費及び試料準備のための物品購入に充てる
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