2018 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ統計を活用した低解像度構造情報からのモデリング手法の新展開
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16K07286
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮下 治 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 上級研究員 (10620528)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / クライオ電子顕微鏡 / 構造モデリング / フィッティング / ハイブリッドアプローチ / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
生体高分子の構造や運動に関する情報を得るためにクライオ電子顕微鏡実験が幅広く使われるようになっている.技術の発達により,高い解像度の像が得られるようになってきているが,それでも通常得られるデータの解像度は原子レベルには届かない.一方,電子顕微鏡実験ではサンプルを結晶化する必要がなく,より自然に近い構造状態を観測することができるため,X線結晶解析では難しい,機能中間状態などの観測に力を発揮する.そのため,複数の実験データとコンピューターシミュレーションを組み合わせて構造モデリングを行う「ハイブリッドアプローチ」が有効である.本研究では,低解像度データから原子レベルの構造モデルを構築するための統計的な評価関数を用いた新しい手法を開発する.本年度は以下の研究を行った. これまで開発を進めてきた実験データを活用した構造モデリングアルゴリズムの実験データへの応用を進めている.その際,クライオ電子顕微鏡から得られる立体像は3次元格子の形で与えられる.ここで,個々の格子の実際の大きさを指定するパラメーターが分子全体の大きさを決め,モデリングの結果にも影響するのであるが,このパラメーターの見積もりには数%の誤差があることが知られている.そこで,構造モデリングの精度を高めるために,この格子サイズのパラメータについても正確な値を見積もることのできるアルゴリズムを開発している. これまでに,一般的にX線結晶構造モデルの評価をすることに使われている指標は,このパラメーターの評価には不適であり,他の有効な指標を見出している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子顕微鏡データからタンパク質原子構造モデルを再構成する際に指定する必要のあるパラメーターへの結果依存性についてより詳しく考慮する必要がある事が分かり,研究の遂行に想定以上に時間を要した為,進捗がやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
立体格子のサイズを精密化する手法を引き続き行う.さらに,クライオ電子顕微鏡の立体像の実験データには,分子構造上の場所によって含まれているノイズや解像度が異なっている.このような不均一性をモデリングに反映させることのできる構造評価関数の開発を進めると共に,引き続き実験データへの応用を行っている.
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Causes of Carryover |
計画に少し遅れが生じたため.次年度,論文発表や学会発表のための旅費に使用する予定をしている.
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