2017 Fiscal Year Research-status Report
人工細胞システムによる細胞情報クロストークの実現と細胞動態解析
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16K07293
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
湊元 幹太 三重大学, 工学研究科, 准教授 (80362359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧口 金吾 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (20262842)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人工細胞 / 細胞情報 / プロテオリポソーム / 膜タンパク質 / 細胞骨格 / 脂質二分子膜 / GUV / 人工膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、受容体の情報が伝達され応答として現れる系を構築することである。インテグリン(ITG)、細胞骨格関連タンパク質からなる経路、環状ヌクレオチド感受性陽イオンチャネル(CNG)などを、人工膜へ再構成することをめざす。H29年度は、H28年度の実施状況を踏まえつつ、CNG導入リポソーム、ITG導入リポソーム、を具体的に評価できるよう、ひきつづき、GUVプロテオリポソーム作出方法のさらなる改良に取り組んでいく。H29年度の具体的な実施内容は、つぎの通りである。H28年度後半に、物質の内包に適した界面通過法(droplet transfer method)により作製したGUVを用いて、リン脂質膜とバキュロウイルスの膜融合後を行い、静置水和法GUVのケースとの間に差異があること、ウイルス成分の膜上の分布、特にGUV膜へ取り込まれた膜受容体の膜上分布から、融合・組込みを統計的有意に検出できること、などを明らかにし投稿したが、今年度採択され原著論文として公開された(DOI: 10.1016/j.colsurfb.2017.04.027)。当該論文は、ある程度のGUV集団情報のばらつき具合の変動を統計的に追跡することが重要であることを示しており、それに役立つ多数(大量)GUVの効率的調製方法の開発も進めた。その結果、広い脂質組成、溶液条件に適用できるGUV調製方法として、新たに逆相遠心法を開発した。本成果は原著論文として公開された(DOI: 10.1016/j.colsurfa.2018.02.060)。 非自由の人工脂質膜形成と組換え膜タンパク質発現バキュロウイルス出芽粒子との混合を利用して、GPCR、CNG、ITG、その他膜タンパク質を導入するために利用できる、新規の融合法や、比較的温和な液性での作製条件を、引き続き探っているところであり途中経過の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)界面通過法により作製したGUVに対する、バキュロウイルス(エンベロープ型DNAウイルス)の出芽ウイルス粒子(BV)の膜融合について:①弱酸性下で蛍光標識BVとGUVとの融合能を、膜蛍光強度増強により検証し、既に論文で報告している静置水和法によるGUVとの比較を行った。融合(相互作用)は蛍光増強とともに特に蛍光分布のばらつきを四分位範囲(IQR)で表わすことでも評価できた;②ウイルスとの融合にはGUV内容物が穏和ながら漏洩するものの維持され、内容物濃度のばらつきは、当初作成時のばらつきと同程度だった;③酸性下、融合によりGUV径のばらつきが、多少増した;④脂溶性蛍光色素による標識BV、RFPタグ膜受容体(CRHR1)発現BV、についてGUVの輪郭円周上に沿った蛍光強度プロファイルの変動から、R18と異なりCRHR1が膜上に局所的に固定化されていることが分かり、膜タンパク質でも滑らかな分布を示す静置水和GUVとは異なった。 2)GUVの大量調製の方法を、逆相法をベースに再検討し、逆相遠心法として改良し、論文公開した。本方法は、最終年度の計画実施において、GUV作製法として大いに活用できる。また、界面通過法GUVの検証で得た知見は、本方法のGUVにも適用可能である。 3)界面通過GUVにおいて、CNGチャネル評価のためのイオン透過性試験法を立ち上げた。膜脆弱性を回避するため、自由膜で無い、球状人工細胞膜の作製条件を追試験し、BVによる膜タンパク質埋め込みへ反映させられた。インテグリンと細胞骨格の連絡を担う組換えタンパク質の発現に成功した。 1)~3)の進捗から、概ね順調に計画は運んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度の進捗を踏まえて、つぎの内容に取り組む 1)シグナル伝達経路の受容体と、その下流になる細胞膜上のエフェクターである膜酵素、およびその検出のためのチャネル、などを、効率的にGUVへ組み込む手法を改良する。GUV実験の場合には、一定数を含むGUVの集団を、適切な対象群を設定したうえで見ることにより、効果・挙動が評価可能であることが、H29年度の成果からあきらかとなっている。これまで、ばらつきの多い実験結果であることが、GUV実験のネックであったが、むしろ、ばらつきの程度の条件ごとの比較や時間的発展を、平均値ではなく、変動係数(CV)や四分位範囲(IQR)を用いて測ることで、有意な結果を簡易なGUV実験から十分に得られることが分かっており、このことを踏まえたい。 2)そのため、H29年度に開発した方法による大量調製可能となったGUVを用いた場合についても調べる。さらに、GUV脆弱性の問題を回避するための1方法として検討してきた非自由な人工細胞膜についても、ひきつづき、各種GPCR、ITG、そして膜酵素の再構成などにより検証する。 3)GUV内部に細胞骨格系タンパク質の導入を行う。事項細胞動態の解析方法として、H29年度の成果に基づき、単一GUVのみの着目するのではなく、GUV大集団に対し顕微観察し、その動態から情報を引き出せる指標を考案する。 以上から、人工細胞システムにおいて、BVにより導入した組換えタンパク質や封入分子によって発現する、細胞情報応答・機能を評価できるようにしていく。
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Causes of Carryover |
今年度についても、概ね順調に進んでいると判断されたものの、同年度に関連性のある研究テーマに関する寄附金(学術研究助成金)を得るなどしたため、実験で使用する費用(プラスチック類、必須培地類、などの物品費、ならびに、当該研究分野に関連する学会参加費などの経費)について、一部節約されたことなどによって、次年度使用額が発生するに至った。特に、実験消耗品に関する物品費や少額備品については、上記理由のほか、複数業者の利用を図りながら、見積比較やキャンペーンの積極的な利用を行うなど、つねにコストを可能な限り抑えようと努めたことも、昨年度同様、理由の一部となると考えられる。 次年度使用額については、平成30年度に行う実験で用いる試薬等に使用する。
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Research Products
(22 results)