2020 Fiscal Year Research-status Report
DNA複製異常が引き起こすヒストン転写抑制システムの分子解明
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16K07302
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高山 優子 帝京大学, 理工学部, 准教授 (90461467)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒストン転写 / DNA複製停止 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストン遺伝子はDNA複製が停止したときには転写が速やかに抑制されることが知られている。そのため、ヒストン転写とDNA複製の進行をモニターしている機構があると考えられているが、これまでその分子機構は明らかになっていない。申請者は分裂酵母を研究材料にして、DNA複製停止チェックポイント因子とヒストン転写活性化因子が相互作用する予備的結果を得ていた。これまでの研究結果から、Cds1欠損株中ではヒストン転写量が減少していることがわかった。そこで本年度は、このヒストン転写量の減少が、転写開始の影響かRNA安定性の変化によるものかどうかを見極めることで、どちらの制御にCds1が関与しているかについて検討した。さらに、昨年度作成したゲノム不安定化の頻度定量化を進めることにした。 1.Cds1におけるヒストン転写量の減少について 細胞周期同調とDNA複製阻害剤との併用により、Cds1遺伝子欠損株ではヒストンRNA量が減少することが分かった。この結果は、ヒストン転写量の維持にCds1が関与していることを強く示唆している。そこで、このヒストンRNA量の減少がAms2のプロモーター結合低下によるものかどうかを、クロマチン免疫沈降解析により調べが、Ams2結合量に大きな変化はなかった。次に、RNAの安定性について実験を行うことにした。細胞周期同調とRNA合成阻害剤の併用する条件の検討をおこなった。次年度はその条件による解析を進めることにしている。 2.ゲノム不安定性の検定 DNA複製速度の遅延がゲノム不安定性を引き起こすことが報告されている。そこで、このゲノム不安定性を定量化できる実験系を作成し、Cds1とAms2遺伝子破壊やヒストン遺伝子破壊の二重変異株でのゲノム不安定化頻度を測定することにした。頻度測定に使う二重変異株を作成できたので、次年度は二重変異株の定量化を行うことにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.Cds1におけるヒストン転写量の減少について 細胞周期同調とDNA複製阻害剤との併用により、Cds1遺伝子欠損株中ではヒストンRNA量が減少することが分かった。この結果は、ヒストン転写量の維持にCds1が関与していることを強く示唆している。そこで、このヒストンRNA量の減少がAms2のプロモーター結合量の低下によるものかどうかを、クロマチン免疫沈降解析により調べた。Cds1遺伝子破壊株をcdc25温度感受性変異株により細胞同調し、細胞周期開始とともにHUによるDNA複製阻害を誘導した。各時間のサンプリングを行い、Ams2のChIP解析によりAms2のプロモーター結合の経時変化を検討した。その結果、Cds1遺伝子の有無とAms2結合量に大きな変化がないことから、転写開始における制御にCds1が関与している可能性は低いと考えた。次にもう一つの原因として考えられる、ヒストンRNAの安定性について実験を行うことにした。細胞周期同調はcdc25温度感受性を用い、HUとRNA合成阻害剤を添加してRNA量の変化をRT-PCRにより解析する計画であった。少量スケールによる細胞同調において、条件を決定することができたが、RNAの定量解析に至らなかった。 2.ゲノム不安定性の検定 DNA複製速度の遅延によりゲノム不安定性を引き起こすことが報告されている。これまでにゲノム不安定性を定量化できる実験系を作成したので、Cds1とAms2やヒストン遺伝子遺伝子変異との二重変異株でゲノム不安定化頻度を測定することにした。本年度は、Cds1とAms2遺伝子単独破壊やヒストン遺伝子破壊と交配して二重変異株を作成することができたが、頻度の定量化することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、ヒストン転写量の維持にCds1が関与していることが強く示唆されている。このときヒストン転写因子Ams2のヒストンプロモーター結合量に変化がないため、転写制御による可能性が低いと考えられた。そこで、次年度はRNAの安定性の変化によるものかどうかをRNA合成阻害剤と組み合わせて解析することで、Cds1のヒストン転写制御の関連のポイントについて明らかにする。また本年度作成したCds1とAms2やヒストン遺伝子との二重遺伝子破壊株を使用してゲノム不安定化の頻度を測定する。これにより、DNA複製停止時に起こるヒストン転写量とゲノム不安定性についての定量化を行い、DNA複製停止とヒストン転写抑制のメカニズムについて考察する。
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Causes of Carryover |
コロナによる対応で一時期自宅勤務となり、その間は完全に実験を止めていた。その後、講義・実習の方法が変わったためにかなりの時間を取られてしまい、実験時間を確保することが困難であった。そのため、計画していた実験を推進することが出来ず、予定していた消耗品の購入量が減少したためである。さらに、プラスチック用品の品薄が続き、出荷停止されているものがあったため、年度内に購入することが出来なかったためである。次年度は、細胞処理に用いるのプラスチック用品や、細胞同調用薬剤の購入などに使用する予定である。また、論文投稿のための英文校正や投稿費に使用することを考えている。
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