2016 Fiscal Year Research-status Report
植物ポリフェノール類によるTRPチャネル活性化と渋味感覚の仕組み
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16K07305
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
斉藤 修 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60241262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 渋味 / センサー / 味覚 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
植物由来のポリフェノール類などが口に中で渋味感覚を引き起こすが、その詳しい仕組みの解明は殆ど行われていない。研究代表者らは、ポリフェノールの一種酸化カテキンが、感覚神経上のTRPA1とTRPV1を他のリガンドとは異なり緩徐に活性化し、特徴的なパターンの神経発火を引き起こすことを見出した。おそらくこの感覚神経活性化の仕組みが渋味感覚の分子機構と期待される。そこで、本研究では、渋味物質の種々のポリフェノール類が如何にTRPチャネルを活性化し、どう感覚神経を発火させ、それがどう個体行動に反映されるか解析して、渋味感覚の分子機構を解明する。 1年目の今年度は、渋味感覚を引き起こす代表的なポリフェノール類のタンニン酸、クロロゲン酸、エラグ酸を後根神経節培養細胞(DRG)、TRPA1あるいはTRPV1発現細胞に作用させ、主にCa2+イメージング法で細胞応答とその特異性を検討した。結果、マウスのDRGは濃度依存的にタンニン酸に応答し、この応答はTRPV1阻害剤SB-366791により抑制された。次に、HEK細胞にヒト, ラット, ニワトリ, ガラガラヘビ, ゼブラフィッシュのTRPV1(順にhTRPV1, rTRPV1, cTRPV1, rsTRPV1, zTRPV1)を発現させ、Ca2+イメージング法で応答解析を行った。すると、hTRPV1, rTRPV1, zTRPV1で濃度依存的な比較的緩徐な応答が検出され、cTRPV1では高濃度のタンニン酸のみに顕著に応答が見られた。一方、rsTRPV1では応答が検出されなかった。そこで、rTRPV1とrsTRPV1の間でキメラチャネルを作り応答解析を行った結果、チャネル膜貫通部に責任部位がある傾向がみられた。一方、クロロゲン酸とエラグ酸については、DRGでは多少の応答が検出されたが、TRPA1とTRPV1の発現細胞では細胞応答が検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロロゲン酸とエラグ酸については、予期せずTRP発現細胞で応答が検出されなかった。そこで、他のポリフェノールについても予備的検討を始めた。結果、ブドウやベリーに含まれる渋味物質のミリセチンがTRPV1を活性化する性質をもつことが分かりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)TRP上の渋味物質認識部位:TRPチャネル上のどの部位が渋味物質・酸化カテキン(EGCG)への応答性を与えるのに必要か最少領域(酸化EGCG認識部位)を決定し、またその決定配列からどの点変異で酸化EGCG感受性を失うか明らかにする。また辛味物質(AITC,カプサイシン)認識部位とは異なることを確認する。これにより、酸化EGCG非感受性TRPA1及びTRPV1を樹立する。同様に、タンニン酸やミリセチンなど他のポリフェノール類への動物種間での応答性の違いを利用して、TRP上の各ポリフェノール類の認識部位を決定する。また、同時に各渋味物質それぞれの非感受性TRPを樹立できるか検討する。もちろん共通部位が二種以上のポリフェノール類を認識する可能性も考えられる。 (2)渋味物質による感覚神経の発火パターン:マウスの後根神経節(DRG)を単離・培養し、この培養感覚神経に種々の濃度の酸化EGCGなどの渋味を呈する各ポリフェノール類を作用させ、細胞応答をCa2+イメージング法などで解析する。以前の研究から酸化EGCGは、辛味刺激の場合と異なり、それぞれの神経細胞が同調せず特徴的な“ずれたパターン”で発火させる現象が観察されている。他の渋味を引き起こすポリフェノール類は、どう感覚神経を発火させるのか、詳細に比較解析して、辛味と渋味を引き起こす神経発火パターンを明確にする。 (3)マウス個体の渋味応答:マウスの飲水二瓶選択法などの行動学的検討により、個体レベルの渋味応答にTRPの活性化が実際にどう関わっているかアプローチする。 (4)遺伝子改変マウスの行動解析:正常マウス、TRP-KOマウス、更には渋味非感受性TRPのノックインマウスを用いた行動解析、更にはそれらに由来する培養DRGのCa2+イメージング解析によって、渋味感覚にTRPチャネルが関わっていることを証明する。
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[Presentation] 茶カテキンとTRPチャネル2016
Author(s)
齊藤修、水戸(黒木)麻湖
Organizer
第31回日本香辛料研究会
Place of Presentation
長浜勤労者福祉会館(滋賀県長浜市)
Year and Date
2016-10-08 – 2016-10-09
Invited
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