2016 Fiscal Year Research-status Report
コンドロイチン硫酸鎖の発現制御を基軸とした運動器疾患克服のための基盤研究
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16K07306
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
三上 雅久 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (20330425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / 糖鎖 / 発現制御 / 筋萎縮症 / 骨粗鬆症 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎えた本邦において、自立性喪失の誘因となる筋萎縮症(サルコペニア)・骨粗鬆症・変形性関節症などの運動器疾患の克服は喫緊の課題である。これまでに我々は、コンドロイチン硫酸(CS)鎖が神経・骨格筋・骨・軟骨といった運動器を支える構成要素の分化過程を制御する多機能糖鎖であることを明らかにしてきた。本研究では、運動器疾患の中でも、筋萎縮症および骨粗鬆症に焦点を当て、それらを克服するための鍵となる「骨格筋分化・再生」過程ならびに「破骨細胞分化」過程におけるCS鎖の役割とその制御メカニズムの解明を目的とし、本年度は、以下の成果を得た。 1)CS鎖の発現を一過的に減少させることによって、骨格筋の分化・再生能が亢進することをこれまでに見出している。CS鎖は、生体内で特定のコアタンパク質に結合したプロテオグリカン(PG)として存在していることから、今回C2C12細胞の筋分化過程で発現するCSPGに着目し、筋幹細胞期にCS鎖修飾の程度が低下するコアタンパク質の同定に成功した。本コアタンパク質のCS鎖非修飾型の組換え体は、CS鎖修飾型に比べ、有意に骨格筋分化を促進する活性を示したことから、本コアタンパク質上におけるCS鎖の発現が骨格筋分化制御に主要な役割を果たしていると考えられた。 2)破骨細胞分化におけるCS鎖の役割を明らかにするために、骨芽細胞非存在下での破骨細胞分化誘導系(RAW264.7および骨髄由来マクロファージ)を用いた。本分化系の解析から、CS鎖の発現量が破骨細胞の分化の進行に伴い減少すること、この減少がCS生合成酵素・分解酵素の機能発現とよく相関することを見出した。興味深いことに、CS鎖の発現を強制的に減少させると、多核化を指標とした破骨細胞の形成が有意に亢進したことから、破骨細胞の分化・成熟は、細胞自律的なCS鎖の代謝調節によって成り立っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、骨格筋分化・再生系におけるCS鎖の作用機序解明の足がかりとして掲げた「骨格筋分化に寄与するコアタンパク質」の同定に成功した。また、破骨細胞分化系におけるCS鎖の作用機序の解析においても、計画通り、分化過程におけるCS鎖の発現レベルの経時変化ならびに、その発現制御に関わる主要な生合成・分解酵素の絞り込みに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した「骨格筋分化に寄与するコアタンパク質」の性質から、骨格筋分化におけるCS鎖の作用機序解明に向けた解析は、当初想定した「CS鎖を認識する受容体」を介した分子機構に依るものではない可能性が考えられることから、今後、骨格筋分化制御サイトカインの働きを調節する機能的側面に重点を置きながら進めてゆく。一方で、破骨細胞分化におけるCS鎖の機能解析は、破骨細胞分化の促進に寄与するCSPGのコアタンパク質の同定を試み、その作用機序解明のための足がかりを得る。 また、すでに作製または保有しているCS生合成酵素の遺伝子改変マウスを用いて、骨格筋や骨をはじめとする運動器の表現型を野生型のものと比較し、先天的なCS鎖の発現量の低下や硫酸化構造の変化が、in vivoにおける運動器の形成過程にどのような影響を及ぼすかを調べる。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね計画通り進展しているが、初年度に計画した課題の一つである「CS生合成酵素の遺伝子改変マウスを用いた運動器に関連した表現型解析」については、本格的着手に至っていなかったため、当初の見込み額と使用額に差が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全体的な研究計画に変更はなく、やや立ち遅れていた遺伝子改変マウスの表現型解析についても年度をまたいで継続実施する予定である。したがって、前年度の研究費も含め、当初の予定通りの計画を進めてゆく。
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Research Products
(6 results)