2018 Fiscal Year Research-status Report
バクテリアトキシンによるリボソーム依存mRNA切断反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K07310
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹本 千重 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 副チームリーダー (40306527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リボヌクレアーゼ / リボソーム / X線結晶構造解析 / 反応メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリアトキシンRelEは、リボソーム中でmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであり、アミノ酸飢餓に応答してタンパク質合成を阻害する役割を果たしている。その反応機構は切断後のRNA断片の末端が2',3'-cyclic体であることから、切断反応に金属が関与しない一般酸塩基触媒機構が提案されている。しかし、既知構造から予測される重要残基の変異による活性損失が顕著でない等、未解明な点が残されている。本研究では、申請者らが決定した野生型RelEとリボソーム・mRNA複合体構造に基づいて、有効な変異体を設計し、反応メカニズムの詳細を明らかにしたいと考えている。 平成30年度は結晶構造(pre-state)をに基づく計算による検証を試みた。まずmRNAの切断部位の糖の2'に水酸基を生成させて、デオキシ体をリボヌクレオチドに置換した。次に、X線結晶構造解析で使用しているCNSを使って、mRNAの切断位置の糖の2面角を維持させるrestrainをかけた場合と、かけない場合でエネルギー最小化計算を行った。アミノ酸は全く構造変化せず、RNAのリン酸結合が僅かに変化した。また糖のpuckerは、前者では2'-endo、後者ではC3'-endoとなった。後者については、CNSのデフォルド設定でRNAに対して3'-endoになるようなrestrainがかかっている可能性があり、得られた構造を議論してできないと判断した。次に、動力学計算ソフトとして信頼性の高いAmberを使って、モデル構造のエネルギー最小化計算を行うことにした。計算で得られた構造は、RNAだけではなく近接するアミノ酸も少し動いており、これらの結果は切断機構の提案の状況証拠と成り得ると考えている。一方、無細胞タンパク質合成系での標準タンパク質(GFP)合成の阻害活性測定では、野生型と変異型の差異を議論するのは難しい結果だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶構造(pre-state)で、mRNA切断部位のデオキシヌクレオチドをリボヌクレオチドに置換し、Amber14によるエネルギー最小化計算を行った。真空中ではRNAの塩基部分の平面性が失われる等、構造が歪んでしまったので、電荷を考慮した仮想的な溶媒中で計算し直した。得られた構造は、一般酸塩基触媒メカニズムよりも、2'-Oがリン酸結合に直接作用するin-lineメカニズムに近いと考えられた。また、クライオ電子顕微鏡による解析から、野生型RelEが70Sリボソーに結合する状態が単一ではないことが示唆されている。引き続き、複合体のデータ収解析を進める一方で、結晶構造解析の結果を軸とした論文執筆に取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
構造解析を中心とした成果をまとめて論文を執筆し始めていたが、2019年1月初旬に開催された国際学会Ribosome 2019で 、核酸化学の専門家や構造解析の研究者らと議論したところ、切断反応メカニズムを提案するためには、生化学的実験が必須であるとの考えに至ったので、研究期間を延長してより確実な論文をまとめることにした。
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Causes of Carryover |
延長した研究期間に行うべき実験実施費用を確保するために繰り越した。今年度、実験に必要な試薬購入等に使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Structural bases for mRNA cleavage on the ribosome by RelE, a bacterial toxin2019
Author(s)
C. Takemoto, M. Kawazoe, T. Kaminishi, S. Suzuki, A. Tatsuguchi, K. Hanawa-Suetsugu, F. Konishi, M. Shirouzu, Y. Muto, P. Fucini and S. Yokoyama
Organizer
Ribosome 2019
Int'l Joint Research
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